◆きらいなもの(政宗)
私には嫌いなものが4つある。
1つめ、英語。
とくに「I love you.」とかそんな白々しい台詞を言われるのが大嫌い。日本人なんだからまず日本語を学べよって感じがする。
まぁ、別に外国が嫌いな訳じゃない。勉強が苦手なわけでもない。
ただ、英語が嫌いなのだ。
理由?聞きたくないから
2つめ、青の色。
水色は平気、紺もまぁ平気と言えば平気だ。ただの青が大嫌い。
だから色鉛筆やクレヨンは、まるで新品の状態のまま、ケースにしまい込まれている。
海は青だなんて誰が決めたのだろう。青い海も嫌いになった。
海を愛する幼馴染みは「ありえねぇ」とか言った。海が嫌いな訳じゃないよ。青が嫌いなだけなんだ。
理由が必要なら、目に染みるとでも言っておこうか。そう言ったら、幼馴染みは首をかしげた。
3つめ、竜。
小さい頃、竜の模型とかなんかで泣いたらしい。青竜なんかもっとダメだ。東の青竜?吐き気がする。東も嫌いになった。もう一人の幼馴染みは言った。「貴様が嫌いなのは青と竜であって、決して日輪が悪いわけではないことを間違えるな」はいはい、お日様は好きだから大丈夫。むしろ私が嫌いなのはそれの反対だ。
4つめ、月。とくに、三日月。
これが満月なら、私は狼男の血を引いているのかと笑うこともできるのだけど、生憎私の大嫌いなのは三日月。じゃぁ私は魔女が妥当だろうか。
見上げるたび、背中に痺れが走る。きれいだと人は言うかもしれないけれど、私にはそれがひどく恐ろしい。
満月は人を狂わせるらしい。私は三日月を見るたび、異様に心が高ぶり、狂いそうになる。
何故これほど掻き乱されるのか分からず、だからこそ、それを恐れ、嫌うのだ。
そう、その4つに共通点をあげるならば、それらはすべて、私を狂わせるもの。私が私で居られなくなるのが何よりも怖い。
だから、嫌う。避ける。
「解せぬな」
私の話を聞いた幼馴染みは短くそう言った。
別に分かってもらいたくて話している訳じゃないからそう言われても何ら構わないのだけど。
「そうではない。確かに人ならば、受け入れられぬものがあって当然だろう。しかし貴様のそれは、、求めているように見える」
私が求めている?冗談じゃない
「その言葉、そっくり返すよ」
「虫酸が走る」
あなただって、口では「忌々しい」だとか「さっさと消えよ」と言いながら、もう一人の幼馴染みのことを誰よりも認めているくせに。
遠くから声が聞こえる。1つ、2つ。
「馬鹿が馬鹿を連れてきおったか」
「あー政宗わりぃな。この憎まれ口が幼馴染みだ。元就、こいつはダチの政宗だ」
「馬鹿は馬鹿を呼ぶのだな。二人さっさと失せよ」
「お前さっきからバカバカとなんなんだよ!」
「悪いが、俺はこいつと違ってfoolじゃねぇ」
幼馴染みが連れてきた男。
英語が混ざった話し方、
青色の服、右目に眼帯。
独眼が私を居抜く。
三日月のように弧を描いた口から紡がれた言葉は
「I miss you, kitty.
and Ilove you,honey.」
私をひどく掻き乱した。
きらいなもの
I hate you....
(聞きたくないのは、あなたの想いを認めたくないから)
(見たくないのは、青を纏う貴方があまりにも眩しいから)
(貴方はあまりにも気高くて、私は到底近づけない)
(月を見れば、どこにいても、浅ましく貴方を求めてしまうから)
だから私は あなたが嫌い。
あの時代、名も無き忍が一国を背負う主を求めるなど、できるはずもなかった。
貴方がどんなに私を求めていてもこの思いを消すことしか出来なかった
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