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◆like or love?(政宗)



「shit!」


パシンと残ったジョーカーを忌ま忌ましげに机にたたき付ける。


昼休みのことだ。いつものメンバーでババヌキをしていた。
普段は幸村がババを引きまくってビリになるのに、今日だけは勘が良かったのか残り二枚でいきなり当てやがった。


「めずらしいねー、政宗が負けるなんて」

山になったトランプを片付ける慶次の傍らで「佐助ぇえ!政宗殿に勝ったぞぉぉ!」と幸村が勝利の雄叫びをあげていた。黙ってろ幸村。まぐれのくせに嬉しそうに言うんじゃねぇよ!

「あーはいはい、よかったね」

「んじゃ、×ゲームは政宗な」

「へーへー」

どうでもいいと受け流す佐助、ニヤニヤと笑う元親。

遊びには×ゲームが付き物だ。さて、今回はというと、幸村が急に異論を唱えてきた。


「某は反対でござる!そんな、人の気持ちを弄ぶようなものは…」

「単に『好き』って言うだけだろ?ラブじゃなくてライクなら嘘じゃねぇよ」

「I like you」

「政宗だめだよー、女の子にって自分で言っただろ?」


そう、今回の×ゲームは『女子の誰かに好きと言ってくる』というものだ。幸村だと決めてかかって女子と指定した10分前の自分を恨んだ。

「政宗が言うとライクでもラブに聞こえるからまずくない?」

「はっ、罪作りな男だよなぁ政宗はよ」

「だろ?だから女子はやめ「男に二言はねぇだろ?ん?」


挑発するかのように元親が笑いやがる。というか単に面白いからだな。
女で遊ぶと後がめんどくさいからやりたくねぇんだが。だが俺も男だ。しぶしぶだがやるしかない。
まだうるさい幸村の奴は佐助が押さえている。


さて、誰にしようか。

ぐるりと辺りを見回してみると、一人の女が歩いて来るところだった。真面目で大人しそうなそいつは、きっと恋愛には慣れていないだろうと勝手に判断した。

無遠慮にそいつの腕を掴む。
驚いてこちらを見た彼女にただ一言


「好きだ」


と言ってやった。

さて、そいつの反応はと言うと


パチリと驚いたように一回瞬きをした後、



「私も好きだよ、政宗くん」


とふわり、花が綻ぶように笑った。

「それじゃぁ」

「あ」

何事もなかったかのように、捕まれた腕を解いて彼女は行ってしまった。


「なんだ、普通の反応かよ」

「つまんないの」

「佐助、ライクとの違いとは何なのだ?」

「うーん、あの子の方が上手だったねー」


外野が好き勝手に感想を言い合う。でも俺の頭には何一つ入ってこない。


熱い。


「政宗ー?」

「躱されたのがそんなに意外だっ……」


慶次がひょいと覗き込んでくる。

「へ?」

「!? Don't look at me!!」


何か言い出す前に咄嗟に慶次の頭をわしづかむ


「ちょ、政宗ちょっと待って頭蓋骨割れる割れる!」

「割れろ!そんで忘れろ!」




『私も好きだよ、政宗くん』


あぁまさか、たったあれだけの言葉で落とされるなんて。

どっちの意味で、なんて確かめるのは、俺の方だった。

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あきゅろす。
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