◆邪魔する者は皆殺し(佐助) 旦那が恋をした。 お相手はそんなにきれいでも目立った子でもない普通の子。大人しくて引っ込み思案の癖に、でも自分の意思をしっかり持つ子だった。 芯が強いって言うのかな、そんな強さに旦那は引かれたんだろうね。めずらしいよ、旦那から女の子に話しかけるなんてさ。 色々とアプローチして、先日やっと告白させて付き合い始めたばっかり。 嬉しかったなぁ。二人が手を繋いで歩いてるのを見たとき。まぁすぐに離しちゃったけどね。 後でからかったら破廉恥破廉恥うるさかった。あんたね、彼女持ったらみんな破廉恥になるのよ。とか言ったら本気で殴られた。 俺様は間違っていないはず。 旦那は俺の大事な人。 その旦那が大切なあの子も大切。 だから 「もう止めれば?」 あの子の下駄箱に入れられた、真っ赤なラブレターを取り出して、今ここから立ち去ろうとした女の子達に呼び掛ける。 ラブレターを開ければ物騒な単語がでかでかと書かれている。 ふーん、『真田幸村と別れろ。お前はふさわしくない。別れなければ殺す』、ねぇ。 「あの二人はこんな嫌がらせぐらいじゃ離れないよ」 「え、なんのこと?」 「やだなぁ猿飛くん!人の手紙、しかも女の子のとこにあるのとるなんてダメじゃん」 イライラする。 なんでわからないんだろう。 なんでもない振りをして、そのうえで俺に色目を使うなんてさぁ、虫がよすぎ。 「とぼけないでよ」 自分の声がひどく冷たくなったのがわかった。 あぁダメだな俺様。穏便に済ませようと思ったのに。 いつもとは違う俺様の雰囲気を感じ取ったのか、女の子たちの顔がこわばった。 「この手紙も、あの子を呼んで脅したのも、変な男をけしかけようとしたのも、みーんな、君たちでしょ?」 ビリビリと手紙を破り捨てる。 こうやって破り捨てた手紙の数は両手を超えた。旦那や、あの子が見つける前に処分してきた。 それだけじゃない。 あの子が呼び出されたら、さりげなくその場に行って邪魔してやったし、下駄箱や机の中にのチェックとか、無くしたものはすぐに探し出したりとか、うん、切りがないなぁ。変な男が寄ってきたら、例え頼まれただけとしても……ね? まぁ、そんなアクシデントもあの二人自身が解決したのもあるけどさ。引き離すどころか、もっと近くなったのは本末転倒っていうのかな。 ようやく二人が一緒になれたんだ。今度こそ、守るんだ。 「今後一切、二人に手を出してみな」 脳裏に浮かぶ二人の幸せそうな姿 「俺があんたを殺すよ?」 にっこりと笑ったつもりなんだけど、目の前の女の子達の顔を見る限り、どうやら失敗したみたい。どーでもいいけど。 邪魔する者は皆殺し 二人が幸せであるためなら、この手を汚すことだって厭わない。 (ま、殺すなんて今じゃ物騒だし、せいぜいこの学校にいられないようにするぐらいだけどね) *お題拝借:フォレストブログお題 [*前へ][次へ#] [戻る] |