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☆何度もあなたの夢を見る(政宗)
*トリップ


ぼんやりと視界が晴れて、目の前に青色の着物を纏った彼の背中が見えた。
小さな声で彼の名を呼べば、くるりとこちらを向いて私を呼ぶ。

「Hey、また来たのかhoney」

隻眼を細めて笑う彼の後ろにはとても綺麗な三日月が弧を描いている。

現代にこれほど綺麗な空を見れる場所があったのだろうか。答えは否だ。何故ならここは、戦国時代の奥州だからだ。


「今日はまたずいぶんと変わった着物だな」

「制服って言うんです。勉強する人はみんなこれを着るんですよ」

「へぇ。よく女が足を出せるものだな。まぁ俺はそっちの方がそそられるけどな」


そう言って、彼は、伊達政宗は私の隣に座った。相変わらず、綺麗な横顔だ。史実じゃこんなにかっこいいなんて聞いてない。それに戦国と言っても、ここは私の知る戦国時代とは違うようだ。
初めてここに来たときは、お互いに混乱した。政宗さんは私が別世界から来たなんて信じられなかったし、私もここがどこなのか、何故こうなったのか何もかも分からず、刀も突きつけられた。

『アンタは誰だ。妖術士か?』

『わ、わたし、は』

それはたった一瞬の邂逅。次の瞬間、私はベッドから飛び起きていた。


そんなことを何回も繰り返してようやく分かった。
私は、夢を通じて異世界に来ているのだと。
そして、何度も政宗さんに会ううちに、私は彼に恋をしてしまった。いや、初めて会ったときからすでに囚われていたのかもしれない。


でも、これは夢なのだ。
夢が見せるしょせん幻。
これを夢のままにするにら、私の思いは決してあなたには伝えてはいけない。
伝えてしまえば、通じてしまえば、もう戻れない。


「政宗さん、」

「どうした?」


それでも会いたいと焦がれる思いは押さえきれずに、今日も私は夢を見る。
夢の中にしかいないあなたに会うために。


「また、会いに来ていいですか」

「アンタならいつでも大歓迎だ」


ぐいっと強く肩を引き寄せて抱き締められる。私を包み込む体温があまりにも温かくて、知らず知らずのうちに涙が流れた。


「苦しくなったらいつでも会いに来い。俺はお前を拒絶しねぇ」


どんなに政宗さんが優しくても、目が覚めればあなたはいない。誰も、いない。私を抱き締めてくれる人も私と話してくれる人も、誰も私を見てくれる人なんかいないんだ。


「そう悲観的になるなよ。今はまだ見えてないだけでそのうち現れる」


着物が濡れるのも構わずに、政宗さんはぐいぐいと私の顔を胸に押し付ける。泣けと、我慢するなと言うように。


「例え夢でもアンタが俺を求めるなら、なんだってしてやるよ」


「だから――」




そこで目をさます。

あぁどうして、夢と言うのはこうも残酷なのだろう。求めて止まないものがこんなにも近くにあるのに、どうしたって手には入らない。
だけど、それでいいの。私の生きる世界とあの人の生きる世界は違う。
生きていれば、夢を見る。夢を見れば、政宗さんに会いに行ける。
政宗さんに会うために生きていける。
ひどく不純な理由だって分かっている。
夢で恋をしたと言ったら、きっとみんなは笑うでしょう。それでも貴方だけは、微笑んで私を抱き締めてくれるような気がしたんだ。


何度も貴方の夢を見る




お題拝借:フォレストブログお題

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