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◇武田家の忍の受難(佐助)



「おやかたさまぁぁぁぁぁ!」
「精進せいゆきむらぁぁぁぁぁ!」
「おやかたさまぶぉぉぉぉ!!!!」



あぁ、また始まったよ。
大将と旦那の殴り愛が。
熱くなるのはいいんだけどさ、回りのものを壊すのはほーんと勘弁してもらいたいもんだよね。直すのだいたい俺様なんだよ?少しは自分達でもやってほしい。そうすれば物のありがたみが分かるだろうにさ。


「ぬぐぐぐ、さすがお館様……」
「旦那ー、大丈夫?」

「当たり前だ!これぐらいで倒れていては武士の名折れ!」


がらがらと瓦礫の中から旦那が立ち上がる。今さらだけどほんと丈夫だよね旦那。

今日の被害はかなり広範囲。道場は床が抜けて柱も一本やられてる。何より塀の一辺がまるごと崩れてしまってる。
補強程度なら俺様と忍隊辺りでなんとかできるんだけど(あれ、忍の仕事って何なの)、ここまでやられると玄人に頼んだ方がいいだろうな。


「まーた、名前ちゃんにお仕事頼まないとねぇ」

「名前殿が来るのか!?」


名前ちゃんの名前を出した途端、旦那がぴくりと反応した。
『団子』って言ったときと同じ反応だよね、それ。


名前ちゃんは、度々壊れる塀の修理を頼んでいる左官屋のとこの一人娘だ。女の子なんだけど、家業の左官屋を手伝っていて、旦那が唯一お話しできる女の子っていってもいいかもしれない。


「うん。久々にここまで壊れたら俺様だけで直せないし」

「なるほど、ここまで壊せば名前殿が……」


ちょっと待って旦那。
名前ちゃんに会いたいからってわざと壊さないでね?
いつも何でもなかったかのように直ってるけど、実際はお金とかが色々無くなってるんだからね?出費半端ないんだよ?ってなんで俺様が武田家の懐を気にしなくちゃんないのさ!俺給料もらうほうだよね……。


「とにかく名前ちゃんに文飛ばすかな」

俺様が行ってもいいんだけど、他の修理があるから鳥に文を飛ばしてもらうのが一番早い。

「佐助佐助!俺にも一筆書かせてくれ!」

「何書くの?」

「『極上の甘味を用意して待っていまする』と!」

「そのお茶用意するのは俺様?」
「無論だ」

「……」


……俺様、忍の仕事というのが分かんなくなってきたよ。

まぁ、旦那が名前ちゃんと仲良くしてるならもうそれでいいような気がしてきたよ。

だって俺も旦那も、名前ちゃんに会えるのがとても楽しみなんだから。



武田家の忍の受難


(こんにちはー、今日も派手にやりましたね!)
(そうなのよーまったく困っちゃうよね)
(私は儲かるので万々歳ですけど)
(名前殿が喜ぶと言うならば某もっともっと精進いたしまする!!)
(だから塀壊すのやめて!)
(無闇に壊す人は嫌です!)

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