2009年到来(葵珠) 「さむ…い」 澄みすぎて張りつめた空気がちくちくと痛い。指先は冷えきって感覚が無くなった。 マフラーに顔をうずめても、気休め程度にもならない。 「甘酒貰ってきたぜ。飲むか?」 「ありがとうございます。いただきます」 差し出された甘酒。 つんとした匂いは湯気に乗って自己主張をする。 喉へ流し込むと、身体の中をゆるやかに流れた。 氷にそっと湯をかけたように、じんわりと温まり、寒さのせいで強ばっていた肩がほんの少し楽になった。 敷地内のベンチに腰掛け、甘酒を堪能する。 「うわ、小吉だってさ」 わたしの隣で、さっき引いたおみくじを開いた葵理事は苦笑していた。 「微妙ですねえ」 「せんせは?」 「わたしは…えーと」 畳まれたおみくじを初めて開ける。 そして目に飛び込んできた文字は、 「大吉」 「すげえ」 「でも、お正月は多めに入れてるらしいですよ。大吉」 「じゃあオレはなんなんだよ」 小吉のおみくじをひらひら揺らしながら葵理事は嘆いた。 その仕草がなんだかおかしくてつい顔がほころぶ。 「枝に結んだらどうですか?」 あまり結果がよくないおみくじは、神社の枝に結ぶと厄を払うとか。 あまり詳しくは知らないけど、確かそんな事を昔から認識していたと思う。 「いや、いいよ」 「なんでですか?」 「せんせと初詣に行った記念に取っておく」 「葵理事…」 葵理事は少し顔を赤らめながら、そのおみくじを丁寧に畳んで財布にしまった。 「意外と可愛い事言うんですね」 「いーんだよ」 「わたしの運、分けてあげますからね」 「ずっとくっついて吸い取ってやる」 「…やっぱりやーめた」 「そりゃねーよ、せんせ!」 お正月だっていうのに、相変わらずなやりとり。 でもそれが一番楽しい。 2009年、最高なスタートを切りました。 A HAPPY NEW YEAR! [*前へ][次へ#] |