8 「うっわー……」 「すごいな、これは……」 「思ったより積もったね」 外の景色を見てそれぞれ感動の言葉を紡ぎ出す。 さっきまでチラチラとしか降っていなかった雪が、いつの間にかあたり一面を真っ白にしていた。 夜のはずなのに明るい。 「すごっ……!ホワイトクリスマスやん!!!」 シャンは感動の声を上げる。 今まで南の方で暮らしていたシャンは、雪が降ることはあっても積もるのを見たことはなかった。 なのに目の前は一面真っ白。 世界の色が今だけ穢れのない『白』ただ一つになってしまったようだ。 「これもすごいが……シャン。裏に行くぞ」 「わ……!」 感動していたところをクロロに急に腕を引かれ驚くシャン。 何事?!という顔をしてクロロを見上げる。 クロロは着いて来いとだけ言ってアジトの裏に向かって歩く。 そして、アジトの裏に回った瞬間、シャンは信じられないものを見た。 「…………なんで、これがここに……」 それは、先ほどシャンがじっと見つめていた大きなツリーだった。 街にあった時よりも雪を被っているが、あんなに見惚れたモノを間違えるわけがなかった。 街にあったはずなのになんで……?とシャンの目は点になる。 他の団員達も裏に来て驚きの声をあげた。 「……さすが団長、綺麗だわ」 「やるなぁー!」 「これは見事だ」 「あはは。それで団長、シャンの後つけてたんだ? こんな大きいモノ盗ってくるなんて珍しいね」 「!!!」 『後つけてた』と『盗ってくる』そういったシャルナークの言葉にハッとする。 そして、ちょっとクロロを牽制してみた。 「街のツリーを盗ってくるか?普通……皆のもんなのに……」 「……ダメだったか?」 シャンが否定的な言葉を発したので、喜ぶと思ったのだが……とクロロはちょっと残念そうに言う。 しかし、シャンは『盗ってきた』というより『つけて』きてまで自分の欲しいものを渡そうと思ってくれた気持ちが、本当に嬉しかった。 そして、少し無言でツリーを見つめた後、クロロを見据える。 そして、幸せそうな顔で笑った。 「ホンマにありがとう……あたし、幸せやわ。 皆もありがとう!!」 と、幸せそうに言うシャン。 そんなシャンを見て、神なんてどうでもいい。でもクリスマスを祝うことにしてよかったなぁ……と幻影旅団全員が思ったのだった。 「寒くなってきたから、そろそろ戻りましょう」 というパクノダの掛け声で部屋に戻る団員達。 最後にツリーのそばを離れたシャンは、ツリーが見えなくなる前にツリーと白い大地に向かって微笑んで言った。 「神様。あたしが一番欲しかった、大好きやと思える人達をくれてありがとなぁ」 そう言うと部屋の中へ戻って行った。 その後、ケーキを食べたり、シャンパンを飲みながら夜中まで騒いだのはいうまでもない。 END... ⇒おまけ [*前へ][次へ#] [戻る] |