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モンロー効果
4
 真里と隆、二人は誰にも何も言う事はなかったが、ずっと見守っていた少女たちには、全てを見抜かれているようだった。

嫉妬マックスの真里が、学校生活も出来うる限り近くにいるのだから、気づかない方がおかしいのかも知れないが。
隆に対して、Cクラスの彼女は、何かあったら相談して、と強く念を押した。

さすが風紀委員というものだろうか。
彼女は一年生にも関わらず既に来年の委員会席も確約されているらしい。
Bクラスの整備委員は、真里に対しては特に何も言う事がなかったが、意味ありげなサムズアップがやけに増えたとか増えていないとか。

自分たちのしらない所で支えられていたのだと痛感した隆は、それまでの態度を本当に心から改め、クラスメイトや同級生の顔をしっかり覚えられるようにしようと決心した。

それを打ち明けた当初、嫉妬の鬼と化した真里に反対されかけたのだが。

 冬休みが終わりに入る頃になると、真里と隆の日々は、より一層お互いがお互いの日常に組み込まれていくようになっていた。

昼休憩に一緒に昼食をとるメンバーに葉月と五月が加わったり、隆が整備委員に相変わらず皆勤賞で参加したりしている事はそのままだったが、更に最近では、放課後デートの回数も徐々に増えていった。
とは言っても、家事のある二人。
どちらかの家で一緒に料理をする程度だったが。

ゲームに勝ったらキスなどという、俗世間にありそうな事もするようになってからは、真里との経験の差に隆が泣きを見る事もある。
が、本人に問いただしても、とぼけた顔で誤魔化されるのだ。

真里は、学年も終わりに差し掛かった今でこそ『雰囲気が変わった』と人気が急上昇したが、元々が謎の多い人間だ。

まだ隆も知らない事がいっぱいあるのだろう。

しかし、それをこれから知っていけるのだと思うと隆は胸の高鳴りを覚える程には楽しみだった。

そして真里も、実は君のために色々勉強したのだと、いつか明かせる日がくるのを心待ちにしていた。

 これから先、何度も隆は真里に『一度ふったくせに』となじる事だろう。
そしてその度に、キスしてねじふせられるのだ。
もはや、お互いがパブロフの犬。

 幾度めかの泊まりの翌朝。玄関先で靴を履く隆に、真里は後ろからマフラーを巻く。
どんなに準備万端でも、これは真里の役目だった。

「忘れ物ない?戸締まりとか、元栓とかさぁ」

真里は、既に畳化しているのか自分の家の事のように、隆の家の点検をこまかくする。
さながら整備委員のようで、隆は思わず失笑してしまう。

「大丈夫だって!マリリンは心配性だな」
「マリリンって呼ぶのやめてよ」

もはや真里に、無表情というものは元々なかったというくらい、彼は表情豊かになっている。
隆は実は、昔の鉄面皮もきりっとしていて嫌いではなかった。しかし、真里は今の自分の方が何万倍も好きだった。
隆がくれたもので、溢れているからだ。

「真里もそういうの気になるんだな」

サイボーグなのに。真里の考えている事などお構いなしに、小声で笑いながら隆はそう言う。
真里はその由来も所以も尋ねた事がなかったが、その話をすると隆が非常に愉快そうな表情をするので、まぁよしとする事にしたのだ。

「俺だって普通の人間だよ」

当たり前の真里の返事に、隆は節目がちにそうだな、と笑う。
あ、その顔好きだなと真里が言うと、途端に真っ赤に染まってしまうが。

「さぁ、せっかくの休日なんだ、思いっきりデートしようぜ」
「そうだね、隆君の行きたいように、遊びまくろう」
「俺が行きたいところじゃなくて、真里君の、な!」
「ハイハイ」

二人並んで駅まで歩いて。時折触れる手の甲に少しだけ笑ったりして。
そうして二人は、休日デートと称した遊園地へと出発するのだった。

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