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モンロー効果
Romanteic connection
 野島真里は、小さい時、自分で覚えている限りは物心がついた頃から誰かに認めてもらいたくて生きてきた。

運動はほとんど出来ない体力の持ち主であったから、スポーツで何かを志す事を早々に諦めて、かと言って他にやる事といえば学業に勤しむ事しか想像がつかない。

そんな訳で、真里は、周りの人物から奇跡と賞賛されるような好成績で、家からも比較的近場の高校に入学を決めた。

入学後の実力テストで、己の親戚が同学年に入学してきた事を知った真里だったが、これまでの人生、コミュニケーションを代償に勤勉につとめてきた事が災いしてか、うまく挨拶が出来なかった。

 中学生生活で学んだ事はなんだったのだろうかと思うくらい、その再会は真里にとって衝撃だった。
その後、紆余曲折あって仲良くなれた事は、筆舌に尽くしがたい喜びであったと後に本人は語る。

「俺としては断然弁当の方がいいと思う!」

彼との会話は、自分の世界が広がるような感覚にさせられるのだ。
そうして周りが見えるようになって、真里は初めて気づかされた。
−自分に向けられる、好奇の視線の多さに。

 クラスメイトからはさすがになかったが、時折上学年の女生徒に声をかけられる事があった。

「ねぇ、野島って頭もいいし結構モテるんじゃない?」

そう言いながら笑いかけてくるのは、真里にいの一番に告白らしい告白をした委員会の長だ。
男性は揺れるものに惹かれる傾向にあると言うが、彼女はみずからのロングヘアーをその武器にしているようだった。

「ハイモテますよって言ったら俺、嫌な奴じゃないですか」

この人は、他人の懐に入ってこようとするところがある。
真里はそれが苦手で、あまり委員会へ顔を出さないようにしていた。

「あーあ、私も結構いけてると思ったんだけど」

野島って、もしかしてそっちの気なの?
そう言われて言い返せない自分がいる事に驚いた。

真里は、『告白』という言葉やそういったキーワードを聞くと、ある人物を思い出さずにはいられないのだ。

 もはや日々のメールがルーチンワークとなっている、隆だ。
元々、全く接点のなかった遠い親戚の彼が、今や友達以上のかけがえのない存在となっているのは、恐らくお互い共通の思いだろう。

そんな隆が、先日打ち明けてくれた言葉は、心のどこかで覚悟していた事だった。

真里は、あの時の事を心の中で反芻する。

(……好き、か。隆君らしい言い方だったな)
正直な話、真里はノーマルの人間で、同性からの告白などありえないというのが感想としては一番だった。

しかし、それが遠からず思っている相手ならどうだろうか。
言われた瞬間、胸中に広がった感情は、ただひたすらの嬉しさだった。

何を返してあげれば、彼を傷つけずに感謝できるであろうか。
どうしてそこまで、思い入れているかは自分自身にもわからなかった。
そして結果として、真里は隆の事を形式的には『振った』形にはなったのだが、何もかもがなくなった訳ではなかった。

 たった一人の家の中で一人ぼんやりと考えるのも、いつだって親戚の彼の事だけだ。
手の中のコントローラーにも集中できず、おざなりに投げ出してしまう。

(仕方がないじゃない。誰から何かを告げられたって、隆君の言葉以上に心が動かされないんだから)

 「応援するよ」と笑った隆に、もう悩みの色は見えなかった。
むしろ、何かを押し殺しているような、嫌な予感のする表情をしているように見受けられるのは、真里の気のせいであると信じたかった。

不安を掻き散らすかのように、けたたましく鳴り響いたはスマートフォンのメール受信メロディー。

「真里君、好きな奴いたんだな」

送信元は見なくてもわかる、このまるでチャットのように短い文を送ってくるのは隆だけだ。

それは、ほぼ確実に何かが起こっている知らせ以外の何者でもなかった。

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あきゅろす。
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