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モンロー効果

 ついにやってきました本日は花の金曜日。
朝から通学路はざわめき、いぶかしい目をしていない人物はいなかった。

原因はたった一つ。野島真里の荷物が、いやに多い事だ。
部活動には入っていない彼にそこまで学校生活を彩る要素は必要がないし、そもそも今日までにここまでの量を運んだ事はない。

通学バッグはもちろん持っているとして、さらに大きめなリュックサックが一つ。

「重そうだね」と話しかけた同学年の生徒に対しては「足りなくなったら家まで取りに帰らないと」ととぼけた回答が帰ってきたとかきてないとか。

道の反対側から、隆はその様子を眺めてしまった。
まさか、真里の準備が万端だとは。
元来しっかりしているだけあって隆は拍子抜けというか、安心というか。
とにもかくにもほっと胸をなでおろす事が出来た。

 真里の家は、実のところ学校の最寄り駅よりさらに隣の駅の近くにあるそうで、散歩が好きという理由でわざわざ毎朝早めにでて歩いている、というのが以前メールでの話だった。

隆も徒歩通学組の一員ではあるのだが、それは家が近いからなせる事であるし、さらに言えば今日は多い荷物だ。
直前にメールで訊ねた際も、彼はあっけらかんと言ってのけた。

「もちろん金曜も徒歩」

 昼休み。弁当もそこそこにBクラスへ駆け込んだ隆に整備委員会の仲間が近寄るが、違うんだと否定してある人物を呼び出した。

「あの野島−親戚なんだけど、野島いる?」
「真里君?いるけどちょっと待っててね」

そう言って離れる彼女を見つめていると、見知った彼の元へと一直線に歩んでいく。
窓から2番目の席にぼんやりと腰掛けている彼は、委員会の女子を見て、それから隆の方へと目を向けた。

(なんか、日差しが当たってすげー綺麗)

素直に、綺麗な人だと思ってしまった。
初めて出会った時もつい見とれてしまっていたが、同じ名字・同じ血筋の親戚であるはずなのに、なかなかどうして野島真里は隆とは正反対だった。

 真里が学食へ行くのについて行くことにした隆は、廊下を進みながら話かけてみる事にした。

「あのさ、真里君は俺の家って来た事あったっけ」

再会したのもつい最近、1、2ヶ月ほど前の話なのだから、知っているはずもないのだが。それでも真里はおそれる事なく返した。

「行ったことないけど住所はわかるよ」

君のお母さんが年賀状出していたから。
そう臆面もなく言われてしまえば、隆は黙ってしまうしかないのだが。

それでも来たことがなくて助かった。
自分のこの後したい話が出来るからだ。

 「放課後、俺も荷物持ってやるから一緒にウチ行かないか?」

せっかくはるばる重たい荷物をひきずってきてくれた親戚を、たまには労っても良いのではないだろうか。

「本当?それなら助かる。終業したらすぐに向かうよ」

真里が早口に言って席を立つものだから、時間の経つのはとても早いものだと思う。
それが楽しみのある日であるならば、なおさら早くすぎているように感じるのかも知れない。

 そしてその言葉通りに、Bクラスの終業とともに真里は行動するのだった。
Cクラスの方が幾分か早く終わったので隆は待つ側だったのだが、バン!と大きめに音をたてて真里が現れた時には残っていたCクラス一同が驚愕した。

−今日のノジマは、何かがおかしい。

 隆の家までにつくまでの数分間、二人の間に会話はなかった。
それもそのはずである。
実のところ隆と真里は、メールでこそ毎日のようにやりとりを交わしてこそいるが、現実社会で言葉を交わすことなど皆無なのだ。

正直、何を話せばいいかわからない……。
というのが隆の心境だった。

気まずさもそのままに、謎の重い荷物を運び終え、ついに野島真里は隆の家へとたどり着いた。

「改めまして、よろしく。自分の家のようにとまではいかなくてもくつろいでいってくれよ」

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