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 どんなに嫌でも月曜日は必ずやってきて、更に言えば頼人はそれなりに真面目な筈の大学生で。
体にしみついた朝の恒例習慣のせいか、三鷹駅に定刻通り到着した頼人に、親友はほっとした笑顔を見せてくれた。

「昨日はごめんね、何か僕が冷やかしちゃったみたいで」
「お前は天使かよ……その、オレこそ、すまん」

親友の首筋。ターコイズのネルシャツからちらりと見えてはいけない痕のようなものが見えてはいるがこの言葉だけで気づかなかったことにしようと頼人は思った。

「か、彼も頼人の事気にしてたからさ」
「あー、今度会ったら謝るな」

どうやら今日もあのサラリーマンは休日のようで、水道橋駅では席を立つ必要性がなかった。
正面付き合わせるのは正直な話耐えられないと感じていたからこそ、少し安心したのはここだけの話だ。

「そういえば今日オレ午前だけで終わりだわ」
「そうなの?じゃあ昼飯一人かぁ」
「あっいや一緒に食ってから帰るから」

相変わらず親友の表情に一喜一憂してしまう自分が憎らしい。
それにしても、と親友が胸元をつついてきて頼人は固まった。

「たばこ、今日は持ってないんだね」
「それは昨日田園が−」
途中まで言いかけて、自分で自分の口を手で塞ぐ。
このままでは余計な事まで思い出しかねない。
そうして黙ってしまった頼人に、親友も何を思ったか目をそらす。

(それにしても、何でオレはあの時されるがままになってしまったんだろうか)
田園トシキの目が、引きつけるように捕らえて離さないからだろうか。
電車の走る音と暢気なアナウンスだけが左から右へと流れていく。

思えば初対面の時から自分は色々おかしかった。
平然と現れたのにも特に驚かなかったし、急に抱きしめられたのに普通に受け入れてしまった。

(あのきらきらした髪の毛見ると目が離せなくなってな)
何を言っているのだか全く持って理解不能な時もあれば、心穏やかに落ち着く時もあって。
あの時のキスだってそうだ。
無理矢理甘ったるい味がねじ込まれてくるのに、嫌などころか自分に沸き上がった感情は……。

(もっと欲しい、なんてよっぽど重傷じゃないか)
まさに出会った事が鉄砲伝来のような自分史上の歴史的瞬間。
雷が落ちたように、頼人は田園に一目惚れしてしまっていたらしい。

「でもこれは恋とかそういうんじゃ−」
「えっ頼人どうかした?」
気がつけば、昼食の時間になっていて、親友を連れてにテラスに来ていたらしい。

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