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「−取りあえず、別の所に行きますか」
と淡々と急かされて、4人で慌てて駐車場まで駆け出す。
どんな目で見られているかなど気にしている暇はない。
自分の事でいっぱいいっぱいなのだから。
「び、びっくりしたよ頼人……付き合ってるんなら最初から言ってくれれば、僕だって偏見なんかする訳ないし」
車に乗り込んで、発進させるでもなく黙っていた4人だったが、緊張を解くためか親友はいやに喋りが増えていた。
「なんかちょっと疲れてしまいましたね、和戸君たちは待ち合わせの駅までで大丈夫でしたっけ?」
車のエンジンをふかせて、サラリーマンはバックミラーごしにこちらに視線をよこす。
言外に、その後二人でどこかへ出かけるという事をにおわされてますます気分が重くなる。
「ああ、僕と彼は別にやましい事はないから安心して」
「何言ってんですか……はは、」
適当に相づちをうつと、バックミラーの中の目が密かに細くなった。
「オレ、ここまででいいっす」
「え、でもまだ駅じゃ−」
「今日は色々ありがとうございました」
「ちょ、ちょっと和戸君!?」
「おーれも」
「田園君!?」
信号待ちになって、ある場所の近くにきた事に気がついた頼人は思わずドアを開けて外に出てしまう。
一日中迷惑をかけ通しなのだから、今更申し訳ないと思っても仕方がないという決意の上だった。
車から無理に飛び出しガードレールを乗り越えて走った先には、あの公園が広がっていた。
「で、何で君はついてきてんだ」
「だっておれはライトの恋人だし」
気づけばケヤキの木にまで田園に追いつめられていた。
好奇心旺盛な女子であれば美形である彼に壁ドンされているかのようなこの状況は好ましいのかも知れないが、頼人は逃げ出したくて苦しかった。
「いつ恋人になったって……!?」
「順番が違うかも知れないけど、今」
「あぁ?」
「ねぇ、おれはあなたのジュリエットになれない?」
こいつは一体、何を言っているんだろうか。
両手で行く手を阻まれているのだから、ここでこの電波的な質問に回答せよとでも言うのだろうか。
「田園、あんまり調子に乗るなよ」
「あっ」
足の力を抜いて、ひと思いに地面に尻餅をつけるふりをしてしゃがみこむ。
田園がひるんだ隙を見て、左側からタックルをかますようにすり抜けた。
「お、オレは恋人はちゃんとじっくり知り合った奴じゃないとダメだからな!!」
自分で言ってて、まるで負け惜しみじゃないかと笑いたくなった。
親友が魔法にでもかかったように付き合い始めたあの状況と同じになるのだけが嫌だったのだと気づいていたからだ。
木に両手をおいたまま、首だけこちらに向けている田園に背を向けて頼人はそのまま走りだす。
それに対して、田園が「はぁい」と嬉しそうに笑っていたとは露知らずに。
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