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 巨大建造物。一日では絶対に回り尽くせないモンスターショッピングモール。
そんなニックネームをほしいままにしているのが、本日の目的地であった。
そして男性4人組がそんな場所を連れだってまわるには、少々難度のある人だかりだ。
神様も休む日曜日とはよく言ったもので、どの店に行くにももたつきが出てしまう。

「ほら、これ見てみろよ−ってあれ……」
「通信が切断されちゃったね」
「そこは普通にはぐれたでいいだろ」

気がつけば、頼人は田園と二人きりで取り残されてしまっていた。
奇しくもそこは比較的女性向けの雑貨屋で、誰の好みでもない筈だが足を踏み入れていたのだ。

「まぁこうなっちゃったのは仕方ない。おれと二人でタンデムだ」
「それはランデブーじゃないか」
「走るデブ?」

もういい、とまるでコントのごとき会話に思わず吹き出すと、田園はしてやったりとにやつく。
全く持って計算などしている筈もないのにどこか余裕のあるその態度が、頼人の心を幾分か軽くさせた。

 とは言え共通の趣味がある訳でもない二人がうまく買い物を堪能出来るかと言えば、それはノーだった。
だから、二人は仕方なくフードコートを端から端まで徘徊する事に決めたのだった。

「おれクレープと雪だるまアイスとドーナツ食べたいな」
「うえ、よく入るなそんな甘ったるいの」
「ラーメンと牛タン交互に食べてるライトに言われたくないけど」
「量の問題じゃなくてな」

どうやら田園は無類の甘味好きらしい。女性客が並ぶそこへ自然に混ざると、ほくほくとした笑顔でスイーツを購入してくる。

「ライトは、甘い物嫌いなんだ?」
「嫌いじゃないが、そうだな、愛煙家だからって訳じゃないけど苦い物とか辛いやつが割かし好きかも」
「煙草ねぇ……」

先ほどの社内でも、運転席と助手席で盛り上がる二人を前に煙草を吸っていると、田園はやけにこちらに目線をくれていた。

「もしかして、煙ダメなタイプか?だったらごめんな」
「そうじゃなくって、煙草は良くないよ」

まさか説教たれるつもりか、と頼人が辟易しかけた瞬間、一瞬だけ田園が近づいて、というか全面的にアップになった。

「ひ、人が見てたらどうするん、だ」
不思議と嫌悪感がなかった。そのせいか、声が面白いくらいに裏返ってしまう。
ほんの少しいやらしい目つきで田園は口元を歪ませると、左手の上に煙草ケースを握り込んだ。

「……それっオレの!」
「ライトには長生きして貰いたいから、これは没収デス」
いつの間にやら、胸ポケットから抜き取られたいたそれに、さすがに怒りがこみ上げる。
端の席のせいか、急に立ち上がった頼人を誰も気に留めない。

「君には関係ないだろうが」
「あるよ、こうやって会ってるんだから関係してるよ」
「そういう問題じゃな……ぅ、ん」
先ほどのキスは本当に触れるか触れないかのものだった。
しかし今度は襟首を掴まれた上でのものだった。

「ちょ、っと、ぁ、んんっ……ぃやめろって!!」
さすがにここまで深く口づけてしまえば、他の客にだって気づかれずにはいられまい。
逃げなければと田園の腕を掴んだ頼人だったが、周囲を見渡そうとして、その手を下げた。

「ら、頼人……何してんの」
衝撃を受けた表情で、親友と男性が立っていたのだ。

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あきゅろす。
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