Short 4 始めて顔を合わせたのは、確か大学の合否発表の時だった。 番号が丁度前後だったせいか、学科も学部も全然異なる二人はほぼ同時に自らの番号を発見して、抱き合うように喜んだのだ。 「それからキャンバス内でちょくちょく会うようになって、それから−」 ぶつぶつと独りでに呟きながら、玄関に乱暴に鞄を押し込んでそのまま靴箱にかけておいた自転車の鍵を手にする。 (いつか一緒に自転車でどっか行きたいねって、アイツ言ってたな) 自分の趣味が散歩しながら喫煙所を探す事だと言えば、親友は笑わずに聞いてくれたし、自分の趣味は自転車に乗りながら小声で歌う事だと言って、お互い変な趣味だと笑いあっていた。 今更それを再現するという訳でもないが、とにかく頼人はどこかへ飛び出してしまいたい気持ちだった。 ペダルに足を乗せると、じいんと額に熱がこみ上げてくる心地がする。 そのままあてどなく力の限りを込めて漕ぎだした先は、子供の頃何度か親に連れてきて貰った中規模の公園だった。 さすがに深夜1時過ぎには、人っこ一人姿も見えず、さすがに居たらいたで恐怖だ。 乱暴に自転車を投げ出すと、荒ぶる呼吸を鎮めようとその場にしゃがみこんだ。 雨でも降っていたのか、土と草の香りがどこか気持ちいい。 「−大丈夫……?」 突然、座る自分の影に被さるように人影が目に映った。 時間はそれほど経っていないが、人が近寄る気配もなかった。 つまりは幽霊、妖怪、果たして− 「に、にんげん」 「そう、おれは人間だけど」 勢いよく立ち上がった頼人の目に最初に飛び込んできたのは、長く柔らかそうな黄緑色の髪の毛だった。 オレンジ色の該当でもはっきりと分かるくらいに、きらきらと輝いている。 「泣いてる?」 「泣いてない、ってか君誰、どこから」 来たんだ、と続けようとした言葉は、突然現れた少年によって抱きしめるように潰されてしまう。 普通なら、変質者だとか、犯罪に巻き込まれているだとか、頼人も抵抗していただろう。 「おれがついてるよ、大丈夫」 しかし頼人は今現在のところ、正常な思考回路を完全にショートさせていたし、何より少年のたおやかな声色を完全に受け入れてしまっていた。 おずおずと自らの背中に延ばされた腕に、少年は小さく微笑んで目を閉じた。 自分より少し背の高い彼に、頼人は頭を預けてみる。 端から見れば、深夜に公園で抱き合っている謎の二人組に違いないのだが、それでも頼人は安心した。 「オレさ、今日失恋したんだ」 「そっか……」 「っていうかマジで、君どこから現れたんだよ」 「おれは木の上で寝てたんだよね」 「ははっ、野生児かよ」 「野良猫とかいて面白いんだけどな」 「え、何それオレの事誘ってる?」 「誘われてると思ってるならそれでいいよ」 これが、後に頼人を困惑させる事になる電波少年−田園トシキのとの出会いだった。 [*前][次#] [戻る] |