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 金曜日の夜というものは、大半が翌日からの週休2日を期待してそわそわしているか、飲み会や外食に出かけている事が多い。
ご多分に漏れず大学生特有の飲み会を計画した頼人は、待ち合わせ場所に指定した遊園地の喫煙所で紫煙をくゆらせる。

「悪いな、突き合わせちまって」
「別に僕たばこの匂い嫌いじゃないし……金曜日なのに、結構空いてるんだね」

灰皿と人気のまばらな空間をと視線を惑わせながら、親友は頼人に苦笑いで告げる。

「いいんじゃね、人居ない方が待ち合わせにも見つけやすいし」
「さっきから待ってるのって誰?頼人の学科のやつ?」
「あー……それが」

実は頼人は、今日の食事の事を親友に明かさないでいた。
隠れてあの人に会っていたなどと知られたら、どんな勘違いをされるか分かったものじゃないからだ。
だから、どうやって切り替えそうかと煙草を片手に眉間に皺を寄せたその時だった。

「遅れてすみません」
「こういう事なんだ」
「どういう事なんだ?」

笑ってこそはいるが親友は半分いやそれ以上に困惑と怒りを隠しきれない様子だ。
気がつけば先ほどまでいた他の愛煙家もほとんどいなくなってしまった。

「あっ違うんだ僕が彼に頼んで−」
「取りあえず!!居酒屋予約してあるんで詳しい事はそっちで!!」

三すくみのように気まずい空気を打破するべく、頼人は人生でもあまり出したことのない程の大声をあげる。
するとようやく仕方のなさそうに親友は表情を緩めた。

 「−それで、ずっと気になってて、僕と良かったらライン交換してくれませんか?」
「え、嘘、頼人夢じゃないよね?はぁ……僕も、ずっと貴方に興味がありました。是非とも……ふつつつかもの?ですがよろしくお願いします」
「フツツカモノ、な」

いつまでこんな茶番を見せられなければならないのだろうか、向かい合わせに座った親友と男性は、どちらかともなく話を初めて、頼人をそっちのけで盛り上がり始めていた。

(最初っから分かっていたつもりだった。オレは所詮ライバルにすらなれなかったんだって)
それでも親友が、今までに見たことのないくらいほっとした表情で笑っていたから。

「コイツ本当に自己管理なってなくてだめだめなんで、支えてやって下さいよ本当」
「本当って二回も言った!?」
「ははは、君に言われなくてもそのつもり」

(なんだよ。男同士だとか年齢の壁だとかぶちあたれよ。こんな、こんな簡単に)
うまくいってしまうのが現実なのか。
空気を読んで愛想笑いでその場にいても、煙草の本数が自分の感情を如実に表す。
これ以上はきっと優しい親友にだって気づかれてしまうかも知れない。
そう思った頼人は、一足先に店を後にする事にした。

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