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へんへん。
通学路
 ある朝の事。長塚蛍が一人で通学路を歩いて居ると、不意に後ろから声をかけられた。
その人物はそこそこ親交のあるクラスメイトで、良かったら一緒に学校へ行かないかとのお誘いだった。
“優等生”である長塚にはそれを断る理由がなく、流行の映画がどうだこうだと他愛もない話をしながら、共に向かうことにした。

 その一部始終を、とある人物が見つめていた。
言わずもがな、向山咲だ。何時も通り、後ろから長塚を襲撃せんと角で待ち伏せていると、クラスメイトと、それはそれは仲が良さそうに歩いているではないか。

「あっちゃー。完全に出るタイミング失った」

先に走って学校に行ってしまおうか。それは最前の策の様にも感じられたが、向山はその場所を離れる事が出来なかった。

「長塚、何の話してんだろ」

そう言えば、長塚がクラスメイトと一緒に居る所を、向山は見た事がない。
それもその筈、長塚は何時だって向山と一緒に行動するからだ。

「……俺ってば邪魔者だったのかねー」

長塚はあの作り笑いでクラスメイトと過ごしている方が好きなのかも知れない。
自嘲気味に呟きながらも、一度そう考え出してしまうと、向山は急に胸のどこかが痛みだす様な気持ちになるのを抑えきれなかった。
似たような感情なら、小さい頃味わった事があるかも知れない。
珍しく冷静にそんな事を思った向山は、それがまるで、大好きなおもちゃを奪われた時の様な気持ちだった事に気がついた。
既に学校の方へと消えていった友人の背を思いだし、向山は一人、口を開く。

「あ、そっか。俺って長塚の事を大事なおもちゃだと思ってたのか」

その答えは、あっている様で実は間違っているのだが。その事に向山が気づくのは、まだしばらく先のお話。

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あきゅろす。
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