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へんへん。
出会い
 長塚蛍は自他共に認める優等生だ。
賢く、運動神経も良く、人当たりも良い。
そう言った周りの評価を聞く時、長塚は一人舞い上がってしまう。
そう、彼は誰よりも負けず嫌いだったのだ。
そんな彼の、唯一、気の置けない仲の人物が、向山咲だ。
そんな彼らを接近させたきっかけは、入学して二ヶ月過ぎた頃の、担任のある一言だった。
放課後、プリントを届けにきた長塚に、教師は頭を抱えながら言った。

『―長塚、向山を何とかしてくれないか』

正直に言うと、面倒事が嫌いな長塚は今すぐにでも断りたかったが、結局の所は、にっこりと微笑んで承諾してしまったのである。

 次の日の放課後。早速向山を捕まえた長塚は、自分と向かい合う様に机を並べて向山を座らせた。テストで満点間違いなしと言われたノートを片手に、長塚は誇らしげに向山に言う。

「今日から僕が勉強教えてあげるからね」
「いやいやいや、いらないから。お前の笑顔気持ち悪いし」

じゃあな。そう言って、あっさりと立ち上がる向山に、長塚の堪忍袋は爆散した。
完全に帰るモードに入っている向山の鞄を、遠慮なしに引っ張り、後ろに転んだ上から更に踏みつける。
何が起こったのか未だに解っていない様子の向山に、長塚は“気持ち悪い笑顔”でこう言った。

「いいから。黙って、座れよ」

 本当は、教師に頼まれていなければ、相手にだってしたくなかった問題児だったが、あの一言は存外的外れでも無かったらしい。
その日から長塚は、二年生になってクラスが変わってからも、向山の面倒を見てやる事にしたのである。
今日も、放課後は追試の為に勉強会だ。
シャーペンをくるくると回しながら、一年前の事を思い浮かべて向山は言う。

「あの一言でグッと来るって……長塚ってMなのか?」
「三途の川渡って来いよ馬鹿が」

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あきゅろす。
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