へんへん。
放課後
再び全速力を出して何とか追いついた向山は、未だに痛む頬を押さえて長塚の横に並ぶ。
背中も痛むけど押さえようがないな、と笑っていると、友人の口からは、もう一発しときゃ良かった、と冗談にしては笑えない一言が発せられるが、向山は笑顔で放っておく事にした。
本日の放課後は、ファミリーレストランにて、いよいよ来週に迫った期末テストの勉強会をする事になった。
と言っても、優等生過ぎると教師に言わしめた長塚には、必要のない物なのだが。
ファミリーレストランの中には、同じ目的であろう同級生がちらほらと見えた。
「さてさて、何を食べようか」
久しぶりの来店に、興奮覚めやらぬ様子の向山。
そんな彼からメニューを取り上げた長塚は、そのままメニューを向山の頭部に振り下ろす。
しかし、ラミネート加工された期間限定パフェのメニューは、ダメージを与えるには不十分な物だった様だ。
すぐさま復活した向山は、普段のメニューを手にして上機嫌になっている。長塚は、ため息を吐いて店員を呼んだ。
「ミラノ風ドリアとドリンクバー2つ」
有無を言わさずに告げられた言葉に、反論する早さもなく下げられたメニュー。
向山は悲壮に包まれた顔を隠す事なく机に突っ伏すと、観念する、と小さく呟いた。
勉強を開始する事十分。
集中力の低さは世界一だ、とどうでも良い自負をしている向山は、早くも飽きかけてきていた。
「なぁ、長塚。ミラノって何処だったっけ」
「その質問って家庭科のどの問題に関係あるのかな?」
「……ごめんなさい」
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