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へんへん。
愛読書
 週刊少年ファイトは向山咲の愛読書である。
才能・権力・不条理の三本柱をモットーにした、何とも今時のゆとり世代が好む漫画雑誌だ。

 放課後。長塚の家で、二人は思い思いに自由に過ごしていた。
向山は、週刊少年ファイトのグラビアページを見つめて一人、うっとりと声をあげ、己の感情を確認した。
やはり、自らの好きなのは女の子だと。

「やっぱり春ちんが一番可愛いよなー……あー、付き合いてー」

紙の上で強かに微笑む少女に、向山はそっと自らの唇を重ねんとする。
しかし、すんでの所で、その本はあっけなく奪われてしまった。

「蛍っ何すんだ返せよ……あああっ、俺の春ちんがー!!」

長塚蛍は、軽く鼻で笑うと、雑誌を窓の外へと放り投げる。
綺麗な曲線を描いて外の花壇へと華麗に着地した本は、土にまみれて、もうまともに読む事は不可能そうに思えた。

 本当に、半分泣きかけの表情で雑誌を取りに行った向山だったが、戻ってきた部屋の中に、長塚は居なかった。
トイレか?そう思いつつ、顔の滴を拭うと、突然背後から腕が伸びてきた。
驚きのあまり、向山が動けずにいるのを良い事に、長塚はそのまま、向山を抱き竦めた。

「僕、咲の事好きなんだけど。知ってた?」

向山が、自らが置かれている状況を、いまいち掴めずにいる。
その様子に気付いた長塚は、そっと腕から解放して、向山の正面へと移動する。

「ねぇ、咲。僕が付き合えって言ったら、どうする」

そこに、選択肢がたった一つしかないと言う事は、向山にだって分かる事だった。
断れば、もう友人には戻れない。
しかし、自分達は同性なのだ。どうすれば−。
混乱する向山は、恐々と口を開く。

「分からない。けど、蛍と一緒に居たい」

それじゃ、駄目なんだろうか。
そう尋ねた先山に、長塚は甘くは無かった。向
山の鞄を玄関に置くと、気持ち悪いと言われた“笑顔”で言う。

「僕、自分を受け入れてくれない奴を泊める程、お人良しじゃない」
 閉じられた玄関の扉の前で、向山は、一人でに呟く。
「蛍の、初めてのわがままだ」

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あきゅろす。
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