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へんへん。
冷蔵庫
 長塚の家に着いてしまうと、何だかんだとぼやいていた向山も、その状況をあっさりと受け入れた様で、初めて入る家でぐうたらと怠けた。

「長塚って一人暮らしなんだな」

ちょっと高い目のマンションだから、てっきり凄い親が出てくるかと思った。向山が素直にそう言うと、長塚は誇らしげにふふん、と笑った。

「僕の両親、今海外なんだよね」

インテリアデザイナーって言う奴らしい。
そう言うと、向山はこぼれそうな程に目を輝かせて食いついた。いわゆるミーハーな性格なのだ。

 夕飯もそこそこに終えて、長塚が風呂から上がると、向山は冷蔵庫の前で呆然としていた。
その目線の先には、きっちりと並べられた食材。

「長塚って、几帳面って言うか何というか……」

言葉を選びつつも放心する向山に、長塚はやれやれと首を振る。

「咲んちの冷蔵庫はどうなってるのか、想像がつくよ」

他人の家の冷蔵庫なんてそうそう見ないしな。
ふむふむ、と向山が関心しきって頷いていると、長塚はため息を吐いて冷蔵庫のドアを力いっぱいに閉じた。
勿論、向山にデコピンをする事も忘れずに。

「ってか勝手に人んちの冷蔵庫開けてんじゃないよ」

おでこをさすりながら、向山は誤魔化すように笑う。
その笑みが何だか癪に触る気がして、長塚は再び長いため息を吐いた。

「罰として、僕の事を、下の名前で呼ぶ事」

長塚のそんな一言に、向山は意外そうにええっ、と驚いて、腫れ物を気遣うが如く、長塚の顔色をそっと伺うそぶりを見せた。

「蛍にしては、甘すぎる罰ゲームなんじゃないか」

ある意味ちょっと怖い、だなんて。
全く、変に深読みをしすぎてしまうから、お前は馬鹿なんだ。
少しだけ動揺してしまった表情を、冷蔵庫に伏せて隠しながら、長塚は心の底で酷く狂喜した。

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あきゅろす。
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