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アオソラ

 青山が転入して一週間が経つと、彼を怒濤の様に取り囲んでいたクラスメイトも、すっかり静かになっていた。これでのんびりと読書が出来る、と僕が安心したのも束の間、今度は青山が話しかける様になった。
 今日、僕が読んでいるのは四コマ漫画だ。四コマ漫画はテンポ良く読めるし、独特の絵柄の作品が多くてとても好きなのだが、いかんせん値段が高すぎる為、僕はたまにしか手を出せないでいた。先日、それを聞いた青山は、まるで何て事ないかの様に、あっさりと言ってのけた。
「俺、それならいっぱい持ってるんで、貸してあげましょうか」
そして、今にいたるのだ。青山が学校へと持ってきた四コマ漫画の単行本は三冊だった。アニメ化もした本と、マイナーすぎて本屋でほぼ見かける事のない本だ。僕は驚愕し、周りの目すら忘れて叫んだ。
「青山君……でかしたーっ!アンタ、最っ高だよ!!」
歓喜に打ち震える僕に、青山は嬉しそうに微笑む。
「はい、喜んで頂けたなら光栄です」
 僕がページをめくる度に、隣の青山は、自らが手にする本からは全く目を逸らさずに、どんどんとネタバレを口にしてくれやがった。
「あ、その次のページでリナと美優が恋人同士になるんですよ」
今目にしているコマからは想像も出来ない展開に、僕はえっと声を上げて次のページへと急ぐ。するとそこでは、青山の言う通り、少女二人が熱く百合行為にふけっている真っ最中だった。僕は思わず本を閉じる。
「え、えええー……。この二人は両片思いが丁度良かったんじゃ」
「と言いますか本来の設定であるコーラス部が薄くなってますよね」
「そうそう、良い声で鳴く?とかそう言うセリフはいらねっての」
ネタバレは、確かに悲しいしされると悔しい。だが、青山がするそれは、恐らくは僕のショックを軽減させる物なのだと、何となく思った。
「そう思うようにしないと、ストレス半端じゃないしな」
僕が漫画を流し読みしつつそう呟くと、青山は小さく首を傾げた。
「何でもねーですよーだ」

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