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アオソラ

 今日一日の、少ない時間内で学校中をきちんと紹介しきれるのだろうか。
そんな僕の波乱を知ってか知らずか、青山はお構いなしにどんどんと校舎内を突き進んで、教室にたどり着くと尋ねてくるのだ。

「川島!こちらは何のお部屋なんですか?」
……何時の間にか呼び捨てにされているし。

どう考えても看板には“美術準備室”と記されている。
僕は嘆息しながらそこを指さすと、彼はハテナマークを出しながら、違いますよ、と首を振った。

「君の説明で知りたいのですよ。お願いします」

 案内を始めて、丁度校舎を半分程回ったあたりの時の事だった。
「此処は実験室。授業外の立ち入りは禁止なんだ」

科学の先生とか厳しいから気をつけて。
僕が丁寧にそう言うと、先程までの勢いは何処へ行ってしまったのやら、青山はふうん、とだけの空返事をした。
その様子に些か苛立ちを覚えた僕は、思わず怪訝になっていく表情を隠す事なく、凄みを聞かせて、青山に問いかけた。

「何て言うか、青山君さ、飽きてきてるよね?」

青山は、えっ、と一瞬立ち止まり、言い訳を考える風な仕草をした後、観念した様に目を閉じ、短い息を吐くと、口を開いた。

「ほら、言ったじゃないですか。俺、本の虫なんですよ」

朝の電車内を思い出す。
確かに彼は自らを“本の虫”と称するにふさわしく、横目で見た青山の鞄の中身は、本と言う本で溢れかえって居た。

「つまり、本が読みたい禁断症状が起きてるって訳か」

僕の言葉に、青山は若干恥じらいを込めて頷く。
それなら話は早い。僕達は、未だに案内していない、ある場所へと向かう為に足を進めた。

 旧校舎の端に位置するそこは、図書委員と言う名の数少ない許された人間だけが、入る事が出来る場所だった。
此処は、図書室で扱いを終了した本を保存する為の書庫なのだ。
上から下まで並べられた本を見て、呆気にとられる青山に、僕は思わず、こう呟いた。

「本の森へようこそ、青山君」
「今度は中二病に目覚めたんですか、恥ずかしい人ですね」

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あきゅろす。
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