アオソラ 僕と転入生 一限目の授業は、僕が一番好きな日本史だった。 しかし、どんな内容だったか、終わってみると一切思い出す事が出来ない。 そう、隣に座る転入生こと青山春海に対し、これでもかと言う程に緊張していたのだ。 それは、青山も同じであったらしい。昼休みになった瞬間、彼はわんさかと迫り来るクラスメイト(主に女子)に囲まれていた。 「何処から引っ越して来たの?趣味は?家族何人居るの?」 「春海君って名前珍しいね!女の子みたいー」 青山が、困り果てた様にうろうろと視線をこちらに向けているのを感じた。 僕は、ふと先程担任が言っていた言葉を思い出しながら、はあ、と長い息を吐いて頭を抱える。 どうしようか。それだけを考えて。 “川島は隣の席だからな。学校を案内してやってくれ” 正直にぶっちゃけるとかなり面倒臭かったのだが、横でずっと縮こまった新たなクラスメイトを、みすみす見捨てるなんて事も出来なかった。 「ちょっとごめん、僕、青山君を案内しないといけないから」 クラスメイトの輪に割って入っていくのは、そこそこ勇気の入る事だ。 僕のその言葉を聞くなり、ほっとした表情になる青山の腕を、強引に引っ張り出すと、何かを言われてしまう前に急いで教室を飛び出した。 「川島君でしたっけ。有り難う御座います、大変助かりました」 青山春奈は律儀な奴だ。会って数時間しか経っていないが、そう思う。 「いや、担任に頼まれてたから」 じゃなきゃやらない。 そっけなくそう告げてから、ああ、これじゃまるでツンデレまる出しじゃないか、と自分の失言に押し黙った。 ロボットダンスの様に青山を見ると、ニヤリと意地悪そうに微笑んだ。 「川島君は、今流行りのツンデレでも目指しているのですか?」 「……いいから黙って着いてきてくんないかな」 はいはい、すみませんね。 ニヤニヤと微笑む顔を止めないままに、青山は僕の横をぴったりと並んで歩く。 こいつは、意外に意地悪なのかのかも知れない。 僕は、前言撤回をしてもし足りない位だ、と思った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |