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アオソラ

 青年漫画もそこそこに、僕はついにあの少女漫画を読む事にした。
表紙では、ピンク色の制服に身を包んだ可愛らしい少女が、笑顔でピースをしている。
本当に泣けるのだろうか、これは。
早くも期待を破られそうな予感を、背中にひしひしと感じながら、少しだけ、恐る恐るページをめくる。
その瞬間、僕はその漫画に、一気に引き込まれて行った。

−轟く雷鳴、その中に一人立つ少女。
彼女の片手にはしっかりとナイフが握られ、そこにはべっとりと、拭いきれない血液が付いていた……−

「……っは、これは……」

読み終わった後も、僕はしばらくその本を手放せないでいた。
何というか、表紙詐欺だ。
表紙の女の子が無実の罪を着せられ、逃亡した挙げ句、幸せが掴めると思ったら射殺されてしまう。
妙にヘタウマな絵が、話の物悲しさを増幅させている。
正直、心臓が裂けるかと思ったぞ。

 ようやく呼吸を整えて、本を鞄に入れようとしたその時だった。
目の前に、淡い水色のハンカチが差し出され、躊躇う様に声をかけられた。

「あの、大丈夫ですか?その漫画本当に衝撃的ですよね」

え、え、と僕が慌てて返事を考えていると、相手は穏やかそうににっこりと微笑む。
その表情はどこか“初恋の人”に似ている気がした。
そんな彼の片手には、同じ漫画が握られている。
語ってもいいのよ。
誰かにそう言われた様な気がして、僕は怖ず怖ずと口を開いた。

「ですよね、まさかヒーローが殺された奴の兄とか予想外でしたもん」

僕の言葉に、相手ははいはい、と頷いて返事をする。

「ええ。でも一応第一話の扉に伏線がありましたよ」
「まさか!あれって後付け設定じゃ?」

僕は急いで漫画を開く。
相手の言う通りに扉絵のページを見ると、なるほど納得、ヒーローの視線の先には殺されてしまった少女が居たのだ。

「すげー!よく気が付きましたね」
「俺、自分で言うのも何なんですが本の虫なんです」

伏線とか、どうしても探っちゃうタイプで。
初対面なのに、何かすみません。
彼の言葉に、僕は驚き、うまく言葉にする事が出来なくなった。

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あきゅろす。
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