アオソラ あおはる 2 夏休みが始まって、俺達は初めて、メールアドレスを交換する事になりました。 お互いに、今まで知らなかったのが信じられない程に、俺と川島は近過ぎる存在になっていたのです。 登録が完了すると、川島は、あ、と思い出したかの様に、不意に口を開きました。 「そうだ、青山君、今日この後一緒に来て欲しい所があるんだけど」 もしかして暇じゃない?だなんて、そんな風に聞かれたら用事なんてふっとんでしまう物です。 元々予定なんてありませんでしたが。 「勿論空いておりますよ。どちらへ行かれるのですか?」 問いかける俺に、彼はうーん、と悩む素振りを見せたあと、呟く。 「僕の、“初恋の人の所”、かな」 着いた場所は、学校の“本の森”でした。 俺は、川島と俺とを交互に見つめて、嬉しそうに目を細める目の前の青年に、混乱していました。 「貴方が、大空君の凄く大好きな人、なんですね。初めまして、斉藤と申します。此処の管理人をしている者です」 彼に相談されて、心配していたのですよ。 人の良さそうな笑みを浮かべて、優しくそう言うその人が、どうやら川島の初恋の君らしい。 ようやく理解した俺は、何時も通りに深々とお辞儀をして挨拶をしました。 川島がコーヒー位自分で淹れる、と宣言して取り残された俺と斉藤さん。特に話す事もなく、沈黙に固まっていると、彼はふと口を開く。 「大空君は、私の大事な弟みたいな子なんですよ」 ふふふ、だって可愛いでしょう?そ んな事は、誰に言われなくても俺が一番知っているのですが。 俺は、此処は黙って相槌を打つ事にしました。 すると彼は、急に目をつり上げて、低い声で唸りました。 「私の大事な大事なあの子を、泣かせたりしては、駄目ですよ?」 帰り道、突然お願いしちゃって悪かったな。 と怖ず怖ずと尋ねる川島の手を、俺はそっと掴んで歩きました。 俺にとっても、あの人にとっても、大事なこの子。 これはとんでもない保護者がいたもんだ、と俺は思わずにやついてしまう顔を隠しました。 [*前へ] [戻る] |