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アオソラ
あおはる 青山春海君の場合
 突然ですが、俺の話を聞いて下さい。

俺こと青山春海は、可愛らしい名前のせいで女の子と間違われて居る事が多いのですが、まあそれは置いておいて、両親が作家をしているせいか、小さい頃から本に関わる事が多く、これまで驚く程の数の本を読んできました。
自分の知らない本はないのではないか、とさえ思っていたのです。
しかし、最近は漫画も読むようになってからは、自分はまだまだ知らない物が多いのだ、と言う事に気づかされたのです。それを教えてくれたのは、大事な恋人である、川島大空。彼と俺が初めて出会ったのは、満員電車の中でした。

 父親の仕事の都合で、高校三年生の春から転校する事になってしまった俺は、新しい学舎へと向かう為、人で溢れ返る電車に乗っていました。
片手で、新しく買ったばかりの少女漫画を読みながら。

 読み終わって、数分が過ぎた頃でした。
ふと、横を見ると、何と同じ漫画を持っている方がいらっしゃるではありませんか。
目を逸らそうとしたのも束の間、その人の様子に気がつきました。相手は、酷い汗で、衝撃のあまり本をしまう事すら出来ずにいる様だったのです。

「あの、大丈夫ですか?その漫画本当に衝撃的ですよね」

自分でも、どうして声をかけてしまったのか、分かりません。
ただ、彼の話を聞いてみたくなって、俺はハンカチをそっと差し出すのでした。
俺の言葉に、相手は、みるみるうちに目を輝かせて語り始めました。

 今思えば、あれが人生初めての一目惚れだったのでしょうか。
真実は、定かではありませんが、一つだけ言える事は、俺は確実に、あの時彼に目を奪われたのです。
この時の俺は、まさか彼が隣の席で、一緒に居たい存在にまでなるとは思いもしませんでした。
転入したあの日から、俺は何故か、川島に気に入られ様と必死になっていました。
彼が好きそうな場所を探して、彼が欲しがっている本をさり気なく聞いて。
彼の、川島の喜ぶ顔を見ていると、俺は本の事すらも忘れて、舞い上がってしまえるのでした。

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あきゅろす。
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