アオソラ 4 僕の言葉の直後から、その場を長い長い沈黙が包んでいた。 言ってしまった事への羞恥に染まる僕と、言われてしまった事への羞恥に染まる青山は、他人から見てどういう感じに写るのだろうか。 恥ずかしさでいっぱいの、静まり返る空気をうち破ったのは、青山の一言だった。 「あの……川島、此処昇降口なのですが、大丈夫ですか」 色々と。そんな、青山が放つとは思えなかった予想の斜め上を行く言葉に、僕の顔は、最早茹で蛸のごとく、真っ赤になってしまうのだった。 「青山、兎にも角にも帰ろうぜ、もう僕此処にいられない」 羞恥心を振り切って捻り出した声は見事に裏返る。 青山は、はい、と笑顔で頷く。 僕と彼は、笑いながら学校を飛び出した。 駅までの道を、僕と青山はゆっくりと歩いていた。 まるで、家に帰るのを、惜しむかの様に。 青山は、キョロキョロと小さく周りを見渡し、人気の少なさを確認したかと思うと、オホン!と誤魔化す様に咳を一つして、躊躇いがちに、僕にそっと問いかけてきた。 「川島……その、手を繋いでも、よろしいですか?」 僕が返事の変わりに手を差し出すと、彼は怖ず怖ずとその手に自らの手を重ねる。 触れ合った瞬間、手のひらにひんやりと心地よい感じがして、僕は思わず、彼の手を更にぎゅ、と握りしめてみる。 「ふーん……青山君の手って、案外冷たいんだね」 「済みません、今とても緊張しているので、冷たくなってしまって」 「謝らないでいいよ。暑い時とかに便利だなーって思ったし」 明後日からの夏休み、ずっと繋いでいたいかな。 たまには、僕が青山をからかってやろうと思って、小さなイタズラ心でそう言うと、彼はずっと緊張しないといけないのか、と苦笑する。 これからの夏休み、僕は青山と何をして過ごそうか。 そればかりを考えていると、青山はああ、と思い出したかの様に口を開いた。 「あのネットカフェ、WEBコミックのコーナーが出来たんですよ」 「まじで!早速今度行こうよ」 繋いだ手を振り回して、僕がそう言うと、青山は嬉しそうに頷く。僕と彼の小さな約束を、青空だけが聞いていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |