[携帯モード] [URL送信]

アオソラ

 何時の事だっただろうか。
昔、欲しい漫画を、来る日も来る日もどんどんと買っていく僕に、斉藤さんは感心しつつ、こう言った。

「大空君は、意外に貪欲な性格をしていますよね。こう、欲しくなったら一直線と言いますか、比較的速やかに行動に移すと言いますか」

その言葉を言われた当初は、そんな事ないですよー、と笑い話にする事が出来ていたけど、今なら、その言葉の真意が、身にしみて凄く分かっていた。
僕は今、昇降口で青山が出てくるのを待っているからだ。
あえて死亡フラグ風に説明をするとするならば、“僕、青山君が来たら告白するんだ”と言った所だろうか。

 「……川島、何をしているんですか、そんな所で」

扉を押して出てきた青山は、躊躇いがちにそう尋ねる。
僕は、まぁまぁ、と手を振ってから、ちょっと一緒に帰ろうよ、と声をかけた。

「中途半端な気持ちなら、止めて下さい」

青山は、少し怒った様な表情で、僕の提案を却下する。
恐らくはこの言葉が、今日彼が一番言いたかった事だと言う事がひしひしと伝わってきて、僕はどうしようもない位の罪悪感でいっぱいになった。

「中途半端なんかじゃ、ないよ。止める事も出来ないし」
「そんなのは、嘘です!それなら、どうして昨日は、俺の話を、聞こうともしてくれなかったんですか」

何時も穏やかで割と飄々とした性格の青山を、こんなにも動揺させてしまっている事が、とてつもなく申し訳ない事の様に思えた。

「それは、本当にごめん。僕の勇気が足りなくて、自分の心に答えが出せなくて。……本当は最初から、分かりきっていた事なのに」

ちょっと冷静になって考えてみれば良かったんだ。
僕は青山の事が、凄く好きで、同性同士だけど、それでも、この気持ちは消す事が出来ないのだ。
僕は、今まで彼がくれた優しさに報いる為に、心の底から精一杯に素直になる事にしたんだ。ツンデレは、もう、止める時が来た。

「僕は多分、初めて電車で出会ったあの時から、青山君が、アンタがずっと好きだったんだと思う。その思いに、嘘はないよ」

[*前へ][次へ#]

27/31ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!