アオソラ 2 「斉藤さんは、もし、大事な友人だと思っていた人から、突然告白されたとしたら、どうしますか。どう、思いますか……?」 ぐちゃぐちゃに塗りつぶされた頭で考え出した言葉は、自分に対する質問の様な物だった。 僕のそんな問いを、斉藤さんはふむふむ、と頷きながら聞いてくれる。 彼は、彼が考えている時の癖である、指を組んだり解いたりをする仕草を繰り返して、それからゆっくりと口を開いた。 「もしも、私がそうなったとしたら、その思いを、真摯に受け止める事が大事だと思います。しかしそれは、お付き合いを始める、と言う意味ではありませんがね。わかりますか?」 僕は頷きながらも、少し腑に落ちない所を感じて、首を傾げる。 すると斉藤さんは、そうですね、と苦笑いをしてコーヒーを飲む。 わかりやすい様に、一生懸命言葉を組み変えているのがよくわかった。 「まずは、お付き合いへの返答。出来ない場合は、その理由を述べて、そうして最後は、好意を抱いてくれた事への感謝。こうですかね。」 斉藤さんらしい、真面目で丁寧な答えだった。 冷静に考えてみれば、僕にだってきっと出来たかも知れない。 彼ならば、きっと僕の言葉も考えてくれるんじゃないだろうか。酷い欲が、僕の中で募っていく。 「例えば、今、僕に告白されたとしたら、どう答えてくれますか」 しかし、斉藤さんは僕の想像した表情をしてくれない。 急激に冷えた様に感情のない目で、僕の言葉にはっきりとNGを出したのだ。彼のこんな顔は初めてだった。 僕は少しだけ心臓をつつかれた気持ちになる。 「貴方には、その言葉を使う事は出来ませんよ。これは、私が考えた、私自身の気持ちで、私にしか扱えませんから」 「……斉藤さんには、かなわないですね。全てお見通しですか」 流石、昔から僕の事を知っているだけある。 本音を言えば、少しだけ返事が気になる、というのもあったのだけど。 話が終わりそうな雰囲気になってくると、僕のコーヒーをおかわりして、斉藤さんは微笑んだ。 「まだ話してない事、ありますよね?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |