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アオソラ

 「今日はありがとう御座いました。退屈ではありませんでしたか?」

青山の問いに、僕は親指一本を立てて力強く頷く。
退屈なんて言った日には、僕は一生、周りの人間から後ろ指を指されて、暗い人生を生きていく事になるだろう。
と言うか、思ってない事は言えないもんだ。

「寧ろ最っ高。僕も会員登録しちゃったくらいだし」

いやあ、こんないい場所を教えてくれるなんて、僕はいい友達を持ったよ。
そう言いながら僕がぶらぶらと歩いていると、背後で青山が何かを呟いた。
僕は、二、三歩戻って彼に耳を寄せる。
すると青山は、普段の彼からは想像も出来ない様な怯えた手つきで、僕の手にそっと触れた。

「ちょっと、青山君どうしたの。急に気でもふれたの」
「気なら、気なら会った時からおかしくなってますよ。とっくに」

反応に困っている僕に気づくと、青山はそっと僕を放す。
そんな彼の表情は、喜怒哀楽をごちゃ混ぜにぶちまけた様な、複雑な顔をしていた。

「すみません。僕は君の事を、友人と思う事は出来ません」

たどたどしく、しかし堂々と紡ぎ出されるその言葉を、聞きたくない。
頭を振って、青山の言葉をなんとか打ち切ろうとする。
しかし青山は、どうしてもその先へと進もうとする。小さな攻防がそこに出来ていた。

「川島っ、聞いて下さい。俺は、君の事を凄く好きなんです」

「違う、違うよ。僕とアンタは友達なんだ!」

−僕は、同性愛に差別心はない。
でも、しかし、彼の気持ちを受け入れてしまう訳にはいかないのだ。かつての、僕自身の為に。

何とか青山の手を振り払い、僕は無我夢中になって駆け出した。
遠ざかる遙か遠方で、青山が僕を呼び続ける声だけが、虚しく響いていた。


 ふらふらと走った僕が来てしまったのは、本の森だった。しかし、固く閉ざされた門に退けられ、中に入る事は出来ないが。

「あれ、大空君?そんな所に突っ立って、どうかしました?」

途方に暮れる僕に、頭上から不意に声がかかった。
怖ず怖ずと見上げた先には、想像通りと言うか何と言うか、斉藤さんが窓辺に立っていた。

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あきゅろす。
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