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アオソラ

 ギャグ漫画は、新感覚不条理コメディと言うキャッチコピーに恥じる事なく、登場人物の全てが辛辣すぎてある意味清々しいドSの集団罵倒大会の様になっていた。
まぁ普通に面白いけどね。
特に主人公の口癖何て、馬鹿らしすぎて是非とも真似したい思う。しないけど。

 一冊を読み終えた頃、丁度青山がドアを押して入ってきた。
その手には、二つの紙コップが握られている。どうやらコーヒーの様だ。

「川島の好みが分からなかったので、取りあえずカプチーノです」

僕は一口含んでから、びっくりして飲み込む。
変な所にコーヒーが届きそうになって、思わず噎せてしまった。何故にカプチーノなんだ。

「川島って、何か甘いもの好きそうじゃないですか」
「イメージで僕を語るんじゃないよ。でも、ま、ありがと」

一言お礼を言ってカプチーノをすする。
そして次の漫画へと手を伸ばそうとして−僕は沈黙した。

今日って青山の誕生日だよな?
どうして僕が気を遣われているんだろうか。

この流れは非常にまずいのではないか。
僕は、最近読んだ“いじめ”がテーマの少女漫画の事を思い浮かべた。

 その作品では、主人公が気づかない内に周りの人間が世話を焼き、ついに耐えきれなくなった一人が爆発して、最終的には集団無視に陥ってしまっていた。
今まさに、僕はその状況へと進んでしまっているのではないだろうか。
僕は青山と言う居心地の良い友人を無くす訳にはいかない。
謝らねば、と焦って隣を見ると、青山は悶々と本を読んでいた。
僕が見ている事にも気づかない彼が、一枚一枚とページをめくる音だけが響く。僕は意を決して青山に問いかけると、彼は小首を傾げた。

「ああ、すみません。俺、一回完全に集中するとあんまり気が付かなくなっちゃうんです……でも、謝らないでいいですよ。俺が無理言って付き合って貰ってるんですから、気にしないで楽しんで下さい」

ね?だなんて。そんな風に言われてしまっては、僕はもう何も言えなくなって、次の本へと手を伸ばすしかなくなってしまうのだった。

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あきゅろす。
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