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アオソラ

 僕は、つい数分前までの自分の思考回路を、バズーカ砲でボコボコにしてやりたい衝動にかられていた。
いや、寧ろ、日本刀でメッタ刺しにしたって構わない位には、今は思っている。
青山が慣れた手つきで会員証を提示し、入場を済ませると、コミック部屋と言う、ネットをしない人の為の場所へと案内された。
簡易なベニア板のドアで仕切られ、中には相撲取り一人が座れる位の大きさののソファが、一つしかないそこを見た時、僕の疑惑はもくもくと募るばかりだった。
だがしかし、肝心の本のコーナーへと行った時、僕の心は、大きく揺さぶられる事になる。

 目の前に広まっている光景は、冗談みたいな光景過ぎて、僕は一瞬夢なのではないかと我が目を疑いたくなった。
手が届かなくなる程に、足下から天井のラインギリギリまでの本棚に、ぎっしりと積められたコミックスの山という山。
百巻を越える大長編の単行本でさえも、最後の巻まで揃えられている。
店員オススメ!と言うポップの付いた棚は、知る人ぞ知る隠れた名作と呼ばれる作品がこれでもか、という位に並べられており、僕の心は、もはや片思いの女子中学生の様にときめいていた。
僕は、青山に感謝の言葉を述べるべく、ざわつく胸を抑えて振り向く。

「青山君っ、何、もう、此処僕の為にある様な物じゃん……!」

この漫画なんて、随分前に作者が急死してしまったから、普通の書店ではまずお目にかかる事なんてない。
それが、最初から読めるなんて!!
思わず輝いてしまう目を瞬かせ、本を片手に僕はらんらんと彼に力説する。
すると青山は、僕の言葉にそれはそれは嬉しそうに微笑んだ。

 「取りあえず、まずはこのギャグ漫画と少女漫画を読もっと」

読みたい本を発掘していたら、きっと後悔するに違いない。
僕は前から読みたかった本を数冊手にして部屋へと急いで戻る。

「そんな風に喜んで頂けると、頑張って探した甲斐がありますね」

夢中になって漫画本を見つめている僕に、その後ろで青山がそっと呟いたその一言は耳に入る事は無かった。

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あきゅろす。
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