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アオソラ

 青山が好きな本は、結論からはっきりと言うと、特にない、が正解だった。
彼は本当に何でも好きで、それこそ何だって読んでしまうのだ。
では、最近読んだ本で面白かったのは何だ、と尋ねると、その時鞄に入っていた、子供向け番組の絵本が出てきたのには、大変驚かされた。

 「川島のお陰で、最近の俺は知らなかった漫画を、沢山知る事が出来ました。ありがとう御座います、とてもても、助かっています」

青山は、深々とお辞儀をしながら、そんな事を言うが、彼は僕が値段の高さから手を出せずに居る漫画を、何故かよく所持して居る事が多く、助けられてしまっているのは、意外に僕の方が多かったりする。
僕は隣でどんどん読み進めていく青山をちらりと一瞥し、自分も漫画を読む。

「青山君は、今日は何の小説をお読みになってるんだい」
「俺ですか?今日は『淫乱次郎の濡れた放課後』です」
「青山君、僕達まだ未成年者なんだけど、それって十八禁じゃないの」

しかも表紙は亀甲縛り丸出しだし。
作者名から完璧にアウトゾーン一直線な本なのではないだろうか。
僕のそんなハラハラを、彼は知ってか知らずか、カバーをキョロキョロと見ている。
そして、ある一点に気付くなり、本を鞄の、中へ中へと強引に押し込んでしまった。

「俺は重大な事に気がついてしまいましたよ川島……!」

それが何であるかは、僕を始めとした周りの全ての人間が知っている事実だ。
だがしかし僕は、続きを促す様に、相槌を打ってやった。

「この本は、未成年の閲覧を推奨していません。なんという不覚!」
「どう見たってタイトルと著者名でわかるわボケ」

ついうっかり、と言う名のわざとである暴言が、僕の口からこぼれるが、青山は、そんな言葉にはお構いなしの様に一瞬で立ち直ると、鞄の中から別の本を取り出して、僕にこう言った。

「十八禁でも大丈夫ですよ。俺は年齢不詳と良く言われるのでね!」

僕は色々とつっこみたい事があったが、いちいち指摘するのも面倒だから、ああそう、と小さく返事をして本の続きと向き合う事にした。

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