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アオソラ

 「質問は確か、僕の好きな本、でしたよね」
青山は、優しくまるで気遣うみたいにそっと確認する。
僕はそれに、しっかりと頷いて応えると、彼はううん、と考える素振りを見せた。

「それは、ジャンルの話ですか?著者の話ですか?それとも……」
「いやいや、そんな真剣に考えなくていいよ、何かこう、ラフに」

ラフーと言いながら、僕は手首をゆらゆらと揺らす。
すると青山は、首を傾げながら、怪訝な表情と考える顔をいったりきたりしていた。

「ラフ、ですか……俺、お笑いはあまり詳しくないのですが」
「そう言う事じゃなくてだねぇ!」

予想の斜め上を行く言葉に、僕は思わずつっこまずにはいられなかった。
そして、雰囲気の話!と言うと、青山は今度こそ分かった様子で、

「今流行りの○○系って事ですね、いやー、やっとわかりましたよ」

と満面の笑みで宣った。あってる様で全然間違ってるから、ソレ。
 僕のこんこんとした力説に、本当にようやく理解をしたらしい青山は、苦笑混じりに「すみません」と謝ると、再び沈黙して考えていた。

「参考までに聞きますが、川島は、どんな感じの本がお好みですか?」
「そんな本気で考えなくていいって……そうだな、基本的に漫画であれば何でも読むけど、強いて言うとするなら複線がちゃんとあって、ストーリーが凝ってる奴とか、あとはカバー下やおまけページが豊富な物とか、キャラクターの個性をきっちり生かして、それぞれに感情移入が出来るとか、そう言う感じが好きだな、でも最近読んだのだと−」

そこまで言ってから、青山が全く相槌をうっていない事に気がついた。
もしかしてドン引きさせてしまっただろうか。
恐る恐る青山を見ると、彼はただ困った様に笑って、僕の話をゆっくりと聞いていた。

「川島は、本当に漫画が大好きなんですね。俺が本を好きなのと、同じ様に。俺の好きな本は、簡単には言葉に表せなかったです」

「拙くてもいいから、教えてよ。知って欲しいんでしょ」
挑発するみたいな、僕のそんな言葉に、青山はわかりました、と頷く。

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あきゅろす。
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