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アラマホシーズンズ

 やる気のないままに参加した打ち上げは、まさかのウララとトキタの交際報告で幕を下ろした。
荒瀬曰く、ずっとつかず離れずの距離だった筈が、文化祭で無理矢理に近づけられて嫌でも意識させられてしまったらしい。
元々脚本家とプリマドンナのような立ち位置満足していたからこそ、爆発した時はそれは苦労したとの事。
ウララはトキタと二日目に回りたかったのに何故か本間に声をかけていた事から腹いせに荒瀬に声をかけたようで、まんまとその通りに踊らされてしまっていた事がわかると次郎は憤慨した。

(安心したけどそれはそれで面白くないし何に安心したか分からないのが余計ムカつく)
何はともあれ、ある意味でクラス1の似合いカップルと言えるのではないだろうか。
ぐったりと疲れた気もするが、最後の最後で大きな花火が用意されていた。

 忙しさから解放された次郎は夜道を軽くスキップしながら家路に着く。
今夜はずっと兄がPCを占有しているが、明日は振替休日だから、一日中プレイが許されている。
何をさせようかと考えるだけで他のどんな事も忘れさせてくれるのだから、やはり新しいキャラクターを作るのは正解だったようだ。

(そういえば荒瀬はウララさんに、『り〜君』って呼ばれてたけど、リープリヒもニックネームは『りーちゃん』になるんだろうか)
そんな事を考えながら家のドアを開ければ、どこから漏れ伝わったのか母が2位を祝福してくれた。
誕生日でもない限り滅多に食べる事のないショートケーキの甘さは、疲れを吸い取ってくれるような気がした。

 「行ってら、兄貴」
「珍しいな、ジロがお見送りするなんて―ああ、ゲームすんのね」
たまたま遭遇した兄を玄関先で送り出してから、次郎は朝食もそこそこにPCへと向かう。
平日の月曜日の朝でも結構な人がログインをしている。
次郎もその中に入ろうとすれば、珍しくギルドメンバーから声がかかった。

「マスターお久!最近リヒターさんも忙しいみたいでボクたちばっかりでしたよぉ」
「そうだったのか でも今日から俺は復帰するからな」
「了解〜!何か困った事があったら相談させてくだしぁ!」
「ああでも 最近俺」
まで打ち込んだ所で、リヒターのログインを告げるポップアップが表示される。
サブキャラクターの事を伝えておこうとしたのだが、そちらの方で会話が始まってしまい流れてしまっていた。

 一度ログアウトしてから、サブキャラクターことリープリヒにチェンジすると、待ってましたとリヒターも同じ街にやってくる。
「すげ!いつの間にそんなレベル上げしてたんだよ水臭いー」
粗方装備を獲得したリープリヒをお披露目させようと、自信満々に踊らせてみせる。
リヒターは誉めちぎりつつも、自分も手伝いたかったとうなだれる。

「じゃあ今日は手伝って貰おうじゃないか 何時までいける?」
「いけるとこまでお付き合いしましょう。我らがお嬢様」
恭しく頭を下げるリヒターは、服装も相まってか様になっている。
さらりと揺れるオレンジ色の髪とは全く似ても似つかぬ筈が、どこか荒瀬を想起させた。

取り敢えずの当面はディーラーの転職までしたいと次郎が告げれば、荒瀬は快く引き受けてくれる。
必要なレベルまではあと14。その程度であれば一日まるまる使えばいけなくはない、といった様子だった。
トランプを二度投げて、寄ってターンをしながらモンスターを蹴り上げる。再び離れてから、一度にヒットが狙いやすいスキルを発動する。
くるくるとまわる少女の体から、風が舞うようにトランプが敵へと降り注ぐ。
見た目も今までのマホンでは味わう事のなかった新鮮味そのものだった。

「すっかり中衛が板についてきたじゃん?」
「練習した甲斐があったな」
「うーんこの僕でも見とれてしまうレベルっしょ」
自分の事ではないのに、誉められるとつい嬉しくなってしまう次郎なのだった。

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