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アラマホシーズンズ

 学園祭当日まであと2日の、本日は木曜日。生憎のお天気雨となった校舎内は、折角張り出したポスターが歪んでしまう程の湿気に包まれていた。
荒瀬と次郎は、委員長と補佐らしく各教室を点検して回っていた。
毎年申請と違う内容を行い、お叱りを受ける三年生が後を絶たないというのは教師の弁。高校生活最後だからこそ、派手な事をしたがるのだとか。

「去年は教室内で花火をやったらしい」
「マジか、よく火事にならなかったな」
足りない備品があれば渡して、過剰に持って行っている物は回収。
同じ事を繰り返していると嫌でも眠気がしてくるせいか、何気ない会話でお茶を濁す。

「花火と言えば、例のゲームでも爆竹投げるって機能あるじゃん」
「珍しいな、荒瀬からその話振ってくんの」
「まぁね。僕あれ今持ってたらアンタに投げるわ」
「馬鹿言え。そんなん速攻キュアーかけてお終いだからな」
次郎の言葉に、荒瀬は小さく“魔法職か”と呟いた。それもその筈である、あのゲームではアイテムを必要としない回復術は、ヒーリングのスキルを持つ後衛タイプにしか出来ないのだ。

「今育ててるキャラがカンストしたら、サブキャラもいいかも」
「そういう荒瀬は前衛なんだっけか?」
「すぐ忘れるトリ頭には教えませーん」
両手に段ボールを抱えたまま、軽快な足取りで荒瀬は先に行ってしまう。
別段一緒に移動しなければならないという物でもない筈だが、次郎は思わず追いかけてしまうのだった。

 そんな会話をしたせいだろうか、家に帰ると次郎は一時間だけでもとゲームにログインする事にした。
ここ一週間ほど、ろくにプレイも出来ずひたすらログインボーナスを消化するだけに留まっていたからだ。
ギルドメンバーを確認すれば、時を同じくしてリヒターの名前がポップアップする。

「久しぶり 700年ぶりか?」
「いやいやそりゃない。何か最近マホっち忙しそうじゃん、僕寂しい〜」
「うん 俺もちょっと会いたくなってきてた」
「素直だとそれはそれでキモいな」
冗談だと分かっていながらも多少なりとも苛ついたのは事実なのでマホンはリヒターに爆竹を投げつける事にした。
しかし、リヒターの足下で色鮮やかに火花が散って体力が5消費される筈が、読まれていたかのように避けられてしまった。
悔しくなってキュアーのスペルを無駄うちすれば、ただリヒターの頭上がピカピカと明るく照らされるだけだった。

「リヒターのハゲが眩しいんだが」
「やめんか。キュアーで新しい遊びを思いつくんじゃない!」
たった数日離れていただけにも関わらず、この快活なノリも随分とご無沙汰だった気持ちになるのは何故だろうか。
意外と絶てるものだと安心していた次郎だったが、やはりしばらく辞められそうにないという自覚を強めるだけだった。

「そっちも忙しいみたいに言ってた気がするけど どうなんだ?」
「あー、まぁ普通普通!疲れた〜って家帰ってすぐ寝ちゃうような体力ないマホンたそとは違うんでね」
「マホンたそ言うなっての そっか 体には気をつけろよ」
「アンタは僕の母ちゃんかっての」
リヒターが爆笑するアクションをとれば、次郎はほっとしたように息を吐く。
今の言葉はどう見てもはぐらかされていた。確かに、世界観を大事にしたいだの何だのと自分が言っていた割には適さない質問だったかも知れない。
空気を壊したいと思って、ふと考えていた事を次郎は打ち込んでみる事にした。

「そろそろ俺もさ サブキャラでも作ろうかなって思ったんだが」
「え。何どういう風の吹き回し?」
「別に特に理由はないが マホンもカンストしているしな」
「なるほど・ザ・ワールド」
荒瀬が言っていたからという訳ではないが、せっかく他にもキャラクターを作る枠は開いているのだ。
兄が使用している部分を除けば、もう一人生み出す事が出来る。

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あきゅろす。
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