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アラマホシーズンズ

 どんな物語にも終わりはくる。
 いつまでも続くような気持ちがしていようと、無情にも時は過ぎていくもので。
気づけば早くも1か月半が経っており、刻一刻とその時は近づいていた。
最終日の深夜、23時50分を過ぎた頃。いつも休憩をとっていたメインの大きな街で二人は何をするでもなく会話をしていた。

思い切って、再会してからずっと聞けずにいた疑問を次郎はぶつけてみる事にする。
「そういや言いにくかったらいいんだけど 今何してんのお前」
「家業継いだ。自営だから店番してる時にプレイ出来るんだわ」
確かに学生の頃、彼の実家が本屋を経営していると聞いた事があった気がする。
実店舗以外にもネットで通販もしているらしく、そちらの方が売り上げがあるとかないとか。
リヒターはマホンが知っていると思っているから、向こうから特別話題に挙げる必要がなかったのだ。

「まだ他にない?言ってみたかった事とか」
「そういうお前は? なんかないのかよ」
リヒターは首を傾げて尋ねてくる。こうして甘やかされると次郎はどうしたら良いか分からなくなってしまう。仕方なしに質問に質問で返答してみれば、しばし考えるような素振りをしてから彼は再び口を開いた。

「いやぁ実は、本当にまた会えると思ってなかったからさ、僕は。来てくれて嬉しかったって事だけ!」
「そうか」
「何か照れるな」
「俺も」
淡々と返事こそしているが、次郎の内心は胸が高鳴りっぱなしだ。
素直に教えてくれた事になら、自分も真摯に返すのが義理だろう。

「遅くなってごめん あの時は本当にごめん あとそれとは別にすまなかった」
「また謝ってばっかり。もう良いって僕言ったろ〜?」
冷やかすように小突いてくるリヒターに、一旦ストップをかけるようにマホンが制する。普段は剽軽な彼も、雰囲気の異なる次郎に頷いた。

「違うんだ」
「違うって?一体何が」
どうせ泣いても笑ってもこれが最後だ。次郎は諦め悪く続きを打ち込む。
世界から二人だけが切り離されたような、そんな感覚が沸き立ってくる。

「俺はお前が愛しかったんだよ 荒瀬」

1対1のプライベートチャットにわざわざ切り替えてから、次郎はリヒターに耳打ちする。すると彼は、一滴のミルクがこぼれて王冠を作る瞬間のように、ぴったりと動きと言葉を止めた。
元より一生言うつもりのなかった告白だった。だからこそ、失敗したかと焦りが額に滲む。

 周囲では、いつの間にやら集まっていたのだろうか何処からともなくプレイヤーが揃い、終焉の時を語らっている。
カウントダウンが20から始まっても、リヒターは口を閉ざしたままで、いっそ冗談だと言ってしまおうかと思ったその時になって、ようやく動き出したのだった。

「メアド、変えてないから」
いつでも連絡してくれと、そう約束したあの時と同じように、何という事でもないようにリヒターはそう言葉を記した。
「メアドって」
それはどんな心境なのだと尋ねようとした、その瞬間。

“今まで本当に有難うございました!!”
そんな運営からのメッセージが流れてそのままプツリと回線が途絶えてしまう。
今目の前にリヒターがいるにも関わらず、伝えたい事の1つだって届けられずに、楽しかったゲームが終わってしまう。

(……メールを出す事を、誰が許してくれるというのか)
こんな自分を、彼は待っていてくれたのだ。きっとその連絡を無碍にはしないだろう。
ここで勇気を振り絞る事も、冒険と言うのではないだろうか。
次郎はそう決意して、自らの端末を手に取った。
メールをタップして、アドレス帳に残してあったその人の名前を選択して―。

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あきゅろす。
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