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アラマホシーズンズ

 早速ではあるが明日から連日会議が入るであろう事は用意に想像がつく。
家に着いてから、ギルドの告知にその事を書くと、少し経ってからリヒターもゲームにログインしてきた。
最近では彼の方が先にきている事が多かったからこそ、少し不思議な気持ちになって、何となく尋ねる事にした。

「珍しく遅かったな」
「あー、ちょっとリアが忙しくなりそうでさ」
「そうか まぁ俺も今さっき来たんだがな」
どちらから提案した訳でもないが、マホンとリヒターは今まで現実の話をほとんどした事がない。
だからこそ、相手が本当にキャラクターの性別通りなのか否か、社会人なのかはたまた学生なのか、そういった事は一切知らずにいた。

「マホンは何でこの時間帯に?」
「来月文化祭でな 高3で最後だからって実行委員押しつけられた」
涙目になるアクションをとらせると、リヒターは驚くポーズで返事をする。
どうやら何かが意外だったようだ。

「年近いかなっと思ってはいたけれど。僕も一緒!高3!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるリヒターに、次郎も仰天する。そうか、妙に馬が合うその理由は同学年だったからなのか。

「今までリアルの話した事なかったしな」
「マホマホは非リアだからしゃあない……」
「お前と一緒にするなって!」
思わず画面を見つめて笑いがこみ上げる。しかし、同年代でこのタイミングでインが遅れるようになろうとは、本当に不思議な縁を感じるものだ。

「どうせ俺は非リアだからな 頑張って裏方に徹しますよーだ」
「せいぜい励んでくれたまえ」
「まぁ俺の分も狩り楽しんで」
しばらくこの掛け合いをする事も難しくなるのかと思えば、気持ちがざわつく。切り替える為に今日だけは自分の事を話してみようかと打ち明けてみた。

「俺さ 学校行く時はいつも電車とバスなんだけど 今日はたまたま駅から徒歩にしたらツイてなかったんだ」
「そういうのよくあるやつ。僕も自転車がパンクしてる日に限って授業であてられたりするし」
年齢が分かったせいかいつもよりぐっと距離が近づいたような気がする。
リヒターのキャラクターは青年の設定だが、今日ばかりはどこか幼さも感じられる気がした。

「自転車好きなんだ?」
「いんや。交通費浮かせて課金する為さね」
「でもメンテナンスとかまともにやると結構かかるのでは」
「それなぁ……」
しかしリヒターのオレンジ色の自転車が風になびいている様子は想像すると爽やかだ。
衣装が燕尾服でなければ、滑稽にもなるまい。

「そういえばお前なんで前衛なのにそんな畏まった標準装備なんだ」
ふと疑問に思った事をそのまま口にすれば、うーんとリヒターは首を傾げる。
「前にも言わなかった?マホンはトリ頭だなぁ」
ふと思い返してみると、確かに以前戦う執事の見た目が格好いいからだとか何だとか言っていた気がする。
忘れていたのは自分とはいえ、荒瀬のような煽り方をされると腹が立つ次郎なのだった。

「学園祭終わったら ちょうど新しい季節イベ始まるし楽しみだな」
話題を変えようとすると、リヒターは何かに気がついたようすで慌てているアクションをする。どうしたのだと続きを待っていると、両手の平を併せて謝罪のポーズに切り替わる。
「いっけな〜い!こんな話をしている場合じゃなかったい!明日朝早いから僕ちんもう寝ないといけないんだったわぁ!マホちゃん、あとよろしくねぇ〜ん」
「何だその口調 いいから早く寝ろよ」
「おやすミトコンドリア」
挨拶もそこそこに、リヒターは呆気なくログアウトしていってしまう。
騒々しいギルドメンバーも21時を過ぎたばかりの今ではまださすがに姿を表さない。
一人になった途端、次郎は急激に孤独を突きつけられたような気持ちにさせられた。

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