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アラマホシーズンズ

 「えー、では文化祭の出し物を決めていきたいと思います。荒瀬君書記お願いします」
「何かあれば挙手するように」
次郎は目立ちたがり屋ではないが、見知った顔は以外と少なくない。
だからこそこうして黒板の前に立つと、賑わっていた教室内も真剣そうに取り合ってくれるのだった。

「教室内か外で何か一つやりながら、二日目は舞台で何かを披露しなきゃいけなくてだな―さらに他のクラスとは被り不可となります。よってお化け屋敷とホストクラブは出来ません」
朝掲示板で挙がっていた物はもう取られてしまっているのだ。高校の文化祭でホストクラブを開催するのはいかがなものかと思うが、それを許可するのも大概である。

「じゃあ無難にコントとか?荒瀬と本間でやっといってよ」
「……」
笑いをとる為かクラスのお調子者が手を挙げる。が、荒瀬は完全に無視を決め込んでそれを黒板には記さない。
もっと言えば、コントは二年で披露する事が決定している為最初から論外である。

「歌が上手い人がいれば良いんだがな。それでも一人に頼みきりっていうのも駄目か」
ふと次郎が一つ何かを言えば、クラスのどこかが賑わって話が進まない。
「じゃあ今からカラオケ行っちゃう!?」
「出し物決めてからは好きにしろ。でも今はこっちに集中してくれ」
荒瀬は黒板に向き合ったまま小さく呟く。助け船を出すつもりは毛頭ないが、早く解放されたい次郎も思案した。

「じゃあ、二日目の舞台はお芝居でどうだろうか。幸いにもうちには演劇部のウララさんがいる訳だし」
そう言いながら当人を見やれば、ウララと呼ばれたその生徒は、まさか自分に白羽の矢がたつとは思っていなかったのか驚きに目を見開いた。
「私は嬉しいけど―劇って他のクラスはやらないのかなぁ?うちの学校、演劇部結構人数いるから……」
「確認したがミュージカルくらいしか該当するものがなかったからな。多分大丈夫だと思う。みんなはどう思いますか」
そこまで言って改めて教室内を見回すと、憧れのウララがメインを張ってくれるなら異議なしという意見がほとんどだった。

「端っからそれを言えば良かったじゃねぇか。クソ」
「はい!それじゃあ我が組は劇をやるとして、演目は何にしましょう?」
荒瀬の呪詛を聞かないふりして一度場をまとめる。
シンデレラやロミオとジュリエット、桃太郎に三年峠等々、高校生がやるにはいささかいかがな物かと思うようなタイトルの中、ふと一人の生徒がおずおずと手を挙げた。
文芸部の部長も修めるトキタだ。

「良かったら、オリジナル脚本ってどうかな……前に僕が演劇部の練習用に書き下ろした物があるんだけど」
「いいね!それって言ってた幸福の王子をアレンジしたやつでしょう?」
ウララがそれに反応して、教室の端と端で盛り上がる。
するとコスプレが趣味だという女子のグループが腕が鳴ると大騒ぎだ。
どうにも有り難い事に、次郎と荒瀬を置いてきぼりに話がとんとん拍子に進んでいく。

 「あのお話やるんだったら、主演は荒瀬君がいいなって思うんだけど」
ひとしきり話題が煮詰まってきた頃、ウララは黒板を指さした。
確かに荒瀬は人目をひきやすい顔をしているから、舞台映えもしやすいだろう。

「じゃあ荒瀬で決定」
「横暴反対。僕の方が地位は上なんだけど」
チョークで乱雑に荒瀬の名前を書き記せば、その腕を無理矢理に引き留められる。
しかし決議をとってみれば次郎以外のほとんどが賛成をしているこの現状。

「……畜生、クソ太郎覚えとけよ。地獄のようにパシりまくってやる」
そんなこんなで次郎は裏方に回される事になった。自分の容姿が分かっていたとはいえ、そこまであからさまでは逆に泣けてくる次郎なのだった。
ちなみに、教室ではメイキングを展示する事に決まった。

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あきゅろす。
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