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 「そういえば言ってなかったと思うけど、本日付けで生徒会執行部の顧問になりました」
朝礼もそこそこに、花岡京太郎は教壇の上でしたり顔をした。
生徒会の顧問教師になるという事は、どれだけ凄い事なのだろうか。一瞬静まりきったかと思えば、次の瞬間には教室内は大きな拍手が沸き立った。

「英語の先生とバトルになったけど、ギリで私が勝ってね、まぁそういう事なので、これからもよろしく」
「ハイッ少しでもお役に立てますよう、組の生徒一同頑張ります!!」
「おお、じゃあまずは成績を上げていこうかね」
委員長のやけにはりきった宣言に、次々と賛成の意が述べられていく。
まだ詳しく状況のつかめていない横瀬は、取りあえずめでたい事なのだとその中に加わる事にした。

 「ねぇ横瀬君知ってる?オカキ先生ってこの学校に昔いた時、生徒会長をしていたんだって!」
「もしかしてそれで今回顧問に?」
「他にも色々理由はあるみたいだけど、それが一番大きいみたいだよ!」
「へー……っていうかいつの間にかオカキ先生で定着しつつあるんか」
休み時間。特に次の授業の準備をするでもなくイヤホンを片耳にしていた横瀬に、クラスメイトから情報が入ってきた。

(じゃあ次に生徒会室で聴いたらそこらへんのスクープ掴めるかもな
……よっしゃ新聞部のノルマクリアはコレでいこう)
机の上の教科書をきっちりと角に合わせて配置して、それを手のひらで動かして。
特に意味のない動きをしながら、横瀬は友人の言葉を聞く。
勿論イヤホンはポケットの中にしまいこんでからだ。

「オカキ先生って呼びやすいよね、あの委員長も呼ぼうかなって言ってたし」
「ちょっとその話詳しく」
あの美人な委員長は本気で花岡に恋慕しているとでも言うのだろうか。
であれば横瀬のそういうセンサーは反応せずにはいられないのだが。

「いやぁあの委員長の態度見てたら分かるでしょう。あからさま過ぎ」
「確かに。マジなら応援したいけど」
二人が相思相愛になったら新聞の一面を飾らせて貰えるし、自分は間近でカップル成立が見守れるのでwin-winでしかない。
しかしそうなると自分はもしかしたらかなり邪魔な生徒なのではないだろうか?

(次オカキ先生に頼まれたら、やんわりと委員長に頼めって言わないと)
平穏無事な学園生活を送る為には、無害な生徒を演じなければならないのだから。
例えそれが、少し仲良くなれたように感じていた教師相手であれど。

 横瀬の趣味趣向といえばもっぱら解析を主とした盗聴だが、その他にもアニメ鑑賞も好みだったりする。
元はと言えば、中等部時代の同室者が朝な夕な深夜アニメの録画を再生するせいで洗脳されたせいではあるが、今では逆に現在の同室者をこちら側に引き込む程にはオタク気質になっていた。

「特に今期のおフランスパリキュアはいいよ。エッフェルレディの見えそうで見えない領域が良いし……何より敵のサムライボーイズたちがな!!」
「横瀬氏の目の付けどころは相変わらず鋭いですな〜サムライボーイズの作画はあの製作会社の女性スタッフこだわりの出来らしいですぞ!!」
「やっぱり?僕毎週見ててドキドキしてますもん」
高等部に入ってから同室になったのは別のクラスの少年だったが、アニメを紹介する事ですぐさま打ち解ける事が出来た。

「これで横瀬氏が漫画研究会に入ってくれさえすれば〜」
「えっと、アニメにしか興味ないから……ごめんなさい」
「謝らなくて結構。横瀬氏はイケボ好きなんですもんな」
「うーん、そうなるのかな?」
共有スペースのテレビを一緒に囲みながら、イチ押しのアニメ・おフランスパリキュアのエンディングテーマを口ずさむ。
男性演歌歌手の本格的な歌唱は、子供向けのヒロインアニメとは思えない熱さがこもっていた。

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あきゅろす。
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