透明光速 四月03 そんなこんなで早くも一週間が経った。 教科毎の教師を覚えるのは簡単そうだったが、委員会の活動が思いの外ハードかつヘビーだった。 事ある毎に怪我をこさえるクラスメイトに応急処置をし、廊下で寝ている生徒を起こし、貧血の教師を保健室に連れていく。最後の一つは自分でもおかしいと思うが、まぁ目を瞑った。こうして苦労メモリーズを思い出している間にも、教室では指切ったー!と言う声が上がる。 どうやらカッターで机を掘っていたらしい。小学生か。 「ホラ、貸して見ろ」 「うは、やっぱタナカ来るタイミングも普通」 「……」 「あ待ってタナカ神!見殺しにせんといてぇー!」 救急箱をしまって自習に戻る。 するとクラスメイトは慌ててすがりついて来たが、俺はにっこりと微笑んで堅くお断りした。 「嘗めときゃ治る」 実際浅い傷だった。そんな程度にいちいち絆創膏を恵んでやる訳にはいかんのですよ。 ノートとにらめっこをしていると、前の席から声が掛かる。あの日以降、一度も喋っていなかった加瀬だ。 「タナカ嘗めてやれば」 頭大丈夫か、俺はため息と共にノート上の消しカスを加瀬に向かって払う。 加瀬は女子のようにキャーとか、イヤンとか言いながら下敷きでバリアを張った。 「イケメンに傷がついたらどうすんのよ」 止めてよねプンプン。わざとらしい怒りの効果音をつけて加瀬は教卓に向き直る。 その背中は、心なしか笑っているように見えた。 [*前][次#] [戻る] |