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透明光速
十月04
 二日目のメニューはチョコレートスコーン。
これは加瀬が焼くのに苦心した一品でもあって、そんな様子を見ていた俺としては何としても色々な人に食べて頂きたかったりして、思わず気合いが入ってしまう。
朝ご飯と試食を兼ねて食べたスコーンは抹茶味で、これは良太がリクエストした物だ。
茶色い焦げをフォークで割ると、ほんのりとダークグリーンが見えて、高齢の教師に受けが良さそうな見た目だった。

「ん、ほろ苦くて美味っすな」

一緒にアイスココアがあれば良いかもしれない、甘すぎる位の奴。
そう俺が言うと、加瀬はノートにさらりとそれをメモして、じゃあ今度アッキーにだけ作ってあげるよ、と皿を片づけに立ち上がった。
 今日はいわゆる一般公開日で、他校の女生徒や近所の人達がわらわらと押し寄せていた。
校門前で販売をする俺は、取り囲まれる確率が高く、真っ先にその餌食になっていた。

「マジうけるんだけどー。キモカワからカワイイ抜いた的な」
「手作りお菓子めちゃウマなんですけど!!買い占めなう」

菓子を誉めてくれるのは、加瀬が認めて貰えたって事で、凄く嬉しかった。
しかし、これを加瀬自身が売り歩くなんて事がなくて良かった。
ピチピチ?の女子校生はイケメン料理人なんてご馳走過ぎる。
誠に悔しい事にイケメンである加瀬は、きっとそれはモテていただろうから。
その場合はどちらに嫉妬するべきなんだろうか。

 後夜祭。惜しくもランク外だった我が部活の結果を知らせるべく、俺は売り上げを持って調理室へ戻ると、加瀬は机に頭を預け、うたた寝をしていた。
良太は帰ってしまったらしく、メモ書きがある。
加瀬に声を掛けようとして、その言葉を飲み込んだ。
代わりに出たのは、昨日の問いかけだった。
今なら、素直に尋ねる事が出来るだろう。

「あれって、どう言う意味だったんだ?」

聞いている訳がないからこそ、するりと聞く事が出来たのに。
俺の体は呆気なく加瀬の腕の中に納められてしまう。
やんわりと、でも逃げられない力強さで、加瀬は俺を抱きしめた。

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あきゅろす。
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