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透明光速
十月01
 俺の焦りとは裏腹に、準備期間はあっと言う間に過ぎて行った。
あの後、良太にメールをした所、何で何も言ってくれなかったんだと小一時間愚痴を聞かされて、正直メールした事を後悔したりもした。
結局、材料を三人の割り勘で購入し、調理を加瀬が、良太がお金の管理をする事になった。
俺はと言えば、まぁ残った販売をやる事になったのだが。

「キラ君可愛いっ、さすが元僕の嫁」

興奮気味に俺の周りを駆ける犬……良太が絶賛するのは、今俺が着ている服の事なんだろうか。
元嫁ってなんだ、俺一応男なんだが。

「こんな丁寧なエプロン作れるなんて、妹さん何者〜?」

加瀬は俺の服ーもとい、フリフリの水色エプロンーを引っ張ってニヤニヤと笑う。
そうなのだ。我が愛しの妹様は、文化祭と聞くや否や自室にこもり、次の日にはこのエプロンを手渡してきた。
曰く、絶対俺に似合うらしい。
因みに、ご丁寧な事に頭には同じ布で作られたであろうヘッドドレスがついていた。
でも本当に売り物顔負けの出来映えで、本当に妹が何者なのか、俺は驚愕した。

「こんな格好で販売したらすぐ売れるの間違いなしだなっ」

良太の目は何時にもなくキラキラした目をしていた。
どうやらお金の計算が身に合っているらしく、良太の働きっぷりは素晴らしかった。
そう言えば、今にして思えば良太は委員会でもその真面目さが高く評価されていたっけか。
兎にも角にも、三人の間に前のようなぎこちなさはあまり感じられない、と言うか感じている暇がなく、文化祭は前夜祭を迎えてしまったのである。
加瀬は、オレンジジュース片手に叫ぶ。

「それでは、明日から二日間、がんばりまっしょーい!」
「おー、他の部活ボッコボコにしてやんぜ!」
「キラ君捕まるよ!」

空返事をしながら乾杯をして、一気飲みをしたオレンジジュースは甘酸っぱかった。
それはまるで、これからの二日間を表しているかの様な気がした。

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あきゅろす。
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