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透明光速
七月05
 思わず口をついて出た声は、乾ききっていた。

「それは、俺が好きって言う意味じゃないよな」

言ってる意味がわからないと思う。
俺もよく解ってない。でもこの言葉が一番適切な気がした。良太はうん、と頷く。

「もう気付いてると思うんだけど、僕、トールの事が好きなんだ」

ずっと小さい時からね。良太の声は少しだけ優しくなる。
本当に、真剣な想いを言う良太の目には迷いがなかった。

「勿論とっくの昔に振られちゃってるんだけど。でも僕は、まだ好きなんだ。だれかの物になるトールなんて見れない。誰の物にもならないで欲しいんだ」

その気持ちは痛い程解る気がした。
可愛い女の子や、自分の知らない誰かと寄り添う加瀬を、俺は祝ってやれないからだ。
同じ気持ちだと感じたのか、良太は続ける。

「だからさ、キラ君。僕と二人でトールを守ろうよ。見返りは僕自身。僕結構可愛いと思うんだけど、どうかな?」
「それは、同意出来ない」

酷く聞くに耐えない声だった。それでも絞り出したのは、誰の為だろう。

「俺は俺で、真剣に加瀬を好きだからだ。それに、お前を身代わりにする様な真似、出来ない」

良太は、答えを急かすつもりはないよ、と微笑んだ。微笑んで、俺の左手を掴む。

「良、太?」
「急かすつもりはないんだけど、ごめんね。口止めさせて」

ー良太のその細い体の何処に、そんな力があったんだ。

「やめっ……良太!」

俺の指は、普通には曲がる筈のない方向へと曲げられる。

ゴキリ、と鈍い音がして、目の前が真っ暗になった。

「大した怪我にはならない様にしたよ」

僕保健委員だし。良太の冷えきった声を最後に、俺は気を失った。

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