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透明光速
七月04
 地獄の泳ぎ特訓(命名:良太)を終えて、夕飯のバイキングに舌鼓を打つ。
地元でも有名なこのレストランの自慢らしい狐色の唐揚げを、俺は皿の絵柄が見えなくなるまで盛っていく。

加瀬と良太はと言うと、料理を片っ端から食べに食べ、勝手に味の品評会をやっていた。
あの細身の何処にあの料理が入って行くんだ一体。
と言うかいい加減に料理上手なのは解ったからコックさんに謝れよ。
ギリギリまで出かかったつっこみを唐揚げと共に飲み込んで、俺はため息を吐く。

「先に部屋に戻ってるぞ」

心行くまで完食した俺はレストランを後にする事にした。
皿を片づけながら立ち上がると、背後では杏仁豆腐の柔らかさがどうだとか、刺身の鮮度がどうだとか、未だにコックさん泣かせな議論が繰り広げられていた。

 二人が戻って来るまでの間、俺は部屋で一眠りする事にした。全く今日は疲れたもんだ。
慣れない事を強いられるのは好きじゃない。
それでも頑張ったのは、加瀬が優しかったからだろうか。
良太が厳しかったからだろうか。後者はないな、と否定しながら、ゆっくりと眠りの海に落ちる。
海は海でも、こっちは大歓迎なんだけどな、と考えながら。

 しかし、その眠りは良太の声で直ぐに醒まされてしまった。

「ねぇキラ君、ちょっと話したい事があるんだけど」
「あれ、加瀬はどうしたんだ」

トールは風呂。そう言う良太の目は冷たかった。
俺は息を呑む。良太は心なしか焦っているような、何時もの良太からは想像の出来ない表情をしていた。

「今しか話せない事なんだ。僕とキラ君が二人の今でしか」
「わ、解った。言って見ろ」

背筋に嫌な予感が走るが、見ない振りをして続きを促す。
決心したような真剣な目をした良太は、真っ直ぐに俺を見つめると一言だけ言った。

「僕と付き合わない?」

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