透明光速
四月01
四月と言うものは、まぁ何と言うか、色々な物事の始まりだと俺は思う。進学や就職があって、新たな門出を祝うかの如くどんどん他人と出会わされていく。
今日は高校に入って最初の授業だ。
自己紹介や委員会を決めたりするらしい。正直に言って、かなり面倒臭かったのだが、初っ端の授業からサボるのもどうなんだと自分を律して教室に向かった。
そして未だに教室に来る気配のない教師にため息を吐くと、乱暴に椅子に腰掛ける。
周りの視線が地味に集まって居たたまれない。そのまま誤魔化すように携帯を開いた。
「あーオホン、ねぇ君って何て読むの?」
不意に、携帯電話が奪われる。
それまで真剣にゲームをやっていた俺は、あまりの突然さに声も出なかった。
後少しで六七連勝する所だったのに!恨みを込めて後ろを振り向くと、そこにはどうやら今日から仲良くしなければいけないクラスメイトが立っていた。
後で自己紹介するのにな、と思ったが、ゲームを続けたい俺は、穏便に済ませる為に出来るだけ簡素に答える。
「田奈川。タナカワアキラ」
「へーっ、タナカワって地味なのに苗字珍しいな!」
田奈川ってより、田中って感じ。
目の前の生徒は嘲る様に笑うが、俺は反論を返す事が出来なかった。何故なら、こいつがいわゆるイケメンで、俺が平凡すぎる程だったからだ。
「悪かったな」
苛立ちを押さえて携帯を取り返す。
すると丁度良く教師が入ってきたので、俺はイケメンを自分の陣地から追い出すように、しっしっと手を振る。
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