透明光速
七月02
9時2分に送迎バスが来るから、絶対遅刻するなよ!特にキラ君!
そう言ったのはどこのどいつだったか。駅前のバス停で、俺と加瀬は苦笑いと沈黙に包まれた。
どちらも何とも言わないが、良太にモヤモヤっとしているのだ。
因みに現在10時50分。もう遅刻とかのレベルじゃないコレ。
事故にでも巻き込まれたのを心配するレベルだわ。
俺のその考えを知ってか知らずか、加瀬は携帯をちらりと見た。
「リョータは、すんごい遅刻魔だから」
ごめんねー、と加瀬が謝る。その言葉で俺は、俺の知らない二人の過去を垣間見てしまった気がして、そうか、としか返せなくなってしまった。
「ごめんごめん!ちょーっと遅くなった」
「どこがちょっとだ」
11時を丁度まわった頃、良太は駅前にたどり着いた。
その体には見合わない程の大きい荷物を背負っており、俺は思わず、その中で一番大きなリュックサックを持ってやった。
「バスもう来るぞ。加瀬も用意しとけよ」
そう言うが早いか、送迎バスがやって来る。
俺達三人は、ようやく旅へと出発する事になった。と言っても、近場過ぎる場所なので旅と言う気分には更々なれないのだが。
バスの座席に座って、良太にリュックサックを返す。
良太は返されて始めて気がついたのか、ほんのりとはにかんでお礼を述べた。本当、黙ってたら可愛いのにな、こいつ。
バスが発車して40分程。短いような長いような微妙な時間で、目的であるホテルに到着すると、天気は待ってましたと言わんばかりに快晴だった。
良太は何時もの元気を取り戻したかのように微笑むと、俺に耳打ちをした。
「絶好の海日和だね、キラ君?」
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