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透明光速
六月03
 「参加出来ないんだ」「ごめん」、そう言われた時の加瀬の表情は、どんな表情だっただろうか?

掃除用具を片手にして、今更ながらに後悔している。一度言った言葉は、もう二度と戻らないのに。

 そんな、だって、でも……そんな感情が籠もった、複雑そうな表情だった。
それもその筈だ。暫く独りぼっちでやっていた部活に、ようやく新しい仲間が出来たと思ったら、急に突き放されるんだもんな。
俺だったらかなりショックに感じるだろうな。
保健室の掃除をそこそこに終えると、顔くらいは出してやろうかと調理室へ向かう。
もうすぐ下校時間だ。どうせなら一緒に帰ってしまおうと言う自分勝手な期待も込めていた。
ドアを開けようとした俺は、そのまま立ち止まる。

「リョータそれ全部食べれるのー?」
「トールの分も食べちゃうもんねっ」
「あはは、ちょ、勿体無いって」

調理室では、掃除の任を解かれて部活に参加出来る良太と、一人ぼっちだった筈の加瀬が料理をしていた。
とても楽しそうに。それは、二人の仲の良さを俺に知らしめるには充分だった。

「何だよ、最初から俺が、面倒臭がらずに掃除してたら……」

加瀬は一人になる事もなかったんじゃないか。
その言葉は、俺と加瀬が過ごしたちっぽけな時間を裏切ると同時に、自分勝手で自業自得だと言う事に気付かされる、まるで縄の様な一言だった。

「また明日、か」

良太と加瀬をもう一度見やると、もう既に片付けを始めていた。兎にも角にも、此処に自分が入って二人の空気を壊してしまってはいけない。
それ以上に、どんな顔をして二人の前に現れたらいいのかがわからない。
調理室を離れ、俺はひっそりと呟きながら、何時までもその事実を反芻していた。

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あきゅろす。
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