透明光速 六月02 昼飯の時間。加瀬の机と俺の机をくっつけていると、ドアから小さな頭がチロチロと出入りしていた。 「……良太」 恥ずかしいからこっち来いよ、手招きをするやいなや、良太はちゃっかりと俺の隣の席を拝借して腰掛けた。 「一緒に食べてもいいですか?」 そして、加瀬を顔を伺う、加瀬はそんな良太の姿を見て、アレ?と言った表情をした。 「リョータ。何やってんのこんな所で」 「ってトールじゃん。何ってキラ君が昼飯誘ってくれたから来たの」 どうやら良太と加瀬は知り合いらしい。 一人放置されていく俺に、良太はこっそりと耳打ちをしてくる。 その口はお、さ、な、な、じ、みと小さく動いた。 「アッキー、今日は何作るの?」 加瀬が弁当をしまいながら、例の主婦の雑誌を取り出す。 すると良太は、作るって?と俺に尋ねる。 それを加瀬は一言で片づけた。 「どっかの誰かさんが幽霊部員だから、新入部員を入れました」 「ええ、キラ君部活まで俺と同じなの!?」 じゃあもしかしてキラ君僕の事好きなの、思った事を全てまるまると述べた良太を加瀬は軽く叩くと、まさかアッキーとリョータにそんな接点があったなんてね、と伏し目がちに呟いた。 「あ、でもキラ君今日から掃除当番なんだよね?」 リョータがパンを咀嚼しながら今朝の頼み事を確認する。 俺がいいのか、と尋ねると、うんうんオッケ〜となんともゆるい答えが返ってきた。 「と言うわけで、しばらく部活には参加出来そうにないんだ。ごめん」 自分でも恐ろしいくらいにスラスラと言葉が出たのは、家で散々に練習したからだろうか。 気まずい雰囲気の流れる中、良太はごちそうさまを言う様な軽さで言った。 「明日もまた三人で食べような!」 [*前][次#] [戻る] |