透明光速
六月01
風邪を引いてから三日間、俺は学校を休んだ。
いや、正直に言えば、それはズル休みだった。
元々健康なのだから、風邪自体は半日でよくなってしまった。
この感情に気づきさえしなければ、俺は次の日だって元気に学校に登校していただろう。
「加瀬……ごめんな」
好きになってごめん。
制服に着替えている間、ずっと俺は後悔していた。
加瀬と関わり過ぎた事を。そして、携帯を取り出すと、二人の人物にメールを送信した。一人は、勿論加瀬だ。
着替えを終えて、玄関を出ると、もう一人の送信相手が立っていた。
「キラ君遅い」
「すまん、ちょっとメールしてて」
俺の事をキラ君等と呼ぶこいつは北村良太。
保健委員会の副委員長だ。隣のクラスに在籍している。
普段はあまり関わることはないが、俺は今日、こいつにある頼みがあったのだ。
「それで?委員会でしかあまり接点のないキラ少年は僕に何の用があるんだって?」
「あー、それなんだが、ちょっと暫く掃除当番にさせて欲しいんだわ」
俺の言葉をふむふむと聴いたあと、良太は二つ返事でオッケーを出そうとして、その表情をニヤリと歪ませた。
「面倒臭がりの委員さんが急に掃除をしたがる理由が知りたーいっ」
微笑む姿は白雪姫の様に可愛らしいのに、言っている言葉には有無を言わせない圧力があった。
「え、言わないと駄目なのか?」
思わず怯んでしまう俺に、良太はは・や・く!と手拍子までつけて急かしてくる。その目は大変愉快そうで、俺は頭を抱えるしかなかった。
「好きな奴が居るんだけどな、ちょっと会いたくないんだわ」
苦笑しながらやっと言った言葉に、良太は一瞬だけ目を見開く。
しかし、直ぐに元の微笑みに戻ると、企みを含んだ口調でこう呟いた。
「ねぇ、僕その人に会ってみたい!それから決めてあげるよ」
その言葉に、何故か背筋を冷たい風が突き抜けた気がして、俺は俯いて頷くしかなかった。
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